【スポーツbiz】全米テニスで快挙、大坂なおみの可能性 スポンサーも期待

 
全米オープンテニスの女子シングルスで初制覇を果たし、トロフィーにキスする大坂なおみ=8日、ニューヨーク(共同)

 女子テニス、大坂なおみの全米オープン・シングルスの優勝。日本の選手が初めて挑戦した1916年以来、長い年月の末にようやく手にした初の4大タイトルである。

 3歳でテニスを始めた大坂がその頃からあこがれ、「対戦を夢見た」セリーナ・ウィリアムズを6-2、6-4とストレートで倒しての栄光。心から、戴冠をたたえたい。

 その大坂の試合後の姿が心にしみた。優勝が決まった瞬間、そっとサンバイザーのつばを下ろし、流れる涙を隠した。彼女のこれまでが凝縮された一瞬ではなかったか。

 恒例の優勝スピーチでは、手拍子とブーイングが交錯するなか、「みんな彼女(セリーナ)のことを応援していたと思う。こんな終わり方をしてすみません。ただ、試合を見てくれてありがとうございます」。そしてセリーナを向いて深々とお辞儀をして、こう続けた。「プレーをしてくれてありがとう」

 かつて、こんな優勝スピーチがあったろうか。観客に感謝を伝え、対戦相手への尊敬を率直に現した優勝者の言葉は、そう聞かれるものではない。

 そのとき、会場は静まり、そして歓声が沸き起こった。シングルスのツアー72勝、グランドスラムを2003年に成し遂げて、4大タイトル23勝を誇る36歳の「絶対女王」は20歳の新女王を抱きしめ、祝福した。テレビの前ではあったが、いい光景を見せてもらった。

 私のような思いに駆られた人は、きっと少なくなかったのではないか。大坂の「人となりの良さ」を合わせて思う。

 スポンサーは5社

 大手広告代理店に勤務していた古い友人によれば、「芸能人だったり、スポーツ選手だったり、また文化人など、商品を勧めている人物の人となりが、最終的には商品の売れ行きを長く左右するのだ」という。

 大坂はいま、シューズとウエアの「アディダス」、ラケットの「ヨネックス」に加え、食品大手の「日清食品」、有料放送の「WOWOW」、そして時計の「シチズン」と5社のスポンサードを受けている。

 スポーツ用品2社は当然、彼女が注目を集め始めた2016年に所属契約を結んだ日清食品の眼力に敬服させられる。同社は男子テニスの錦織圭とも所属契約しており、まさに“両輪”を期待したものだろう。

 その契約に際し、大坂はこうコメントした。「日清食品の飽くなきハングリースピリットを胸に、自分のスピリットをたぎらせて、見ている人のスピリットも熱くする戦いをトーナメントで繰り広げたい」。言葉の通りの戦いを、この全米オープンで繰り広げて、ベスト4の錦織ともども期待に応えた。

 WOWOWも同様、ふたりが準決勝に進んだ先週末、契約件数が急激に増えたという。

 シチズンが大坂をブランドアンバサダーとして契約したのは今年、それも全米オープン開幕2日前の8月25日だ。この活躍を予感したか、今週14日には大坂が着用したモデルの時計を発売する。“Better Starts Now”をブランドステートメントに掲げる同社にとって、大坂の「いま」は「未来を開く」スタートとなろう。

 スポンサー各社はいい契約をしたと思っている。イメージが合えば、できるだけ長く継続したいと考える。また、新たに契約を結ぶ会社も少なからず、現れてこよう。それを現実にしていくのは、大坂である。

 王座に就いたものは標的となり、長く君臨するにはいままで以上の努力が求められる。セリーナも、男子シングルスで3年ぶり3度目の優勝を果たしたノバク・ジョコビッチも、そうして今日の地位を築いた。

 「初心」忘れるな

 この優勝で、大坂は優勝賞金380万ドル(約4億2189万円)を手にした。これまで彼女がプロとして獲得した賞金、320万ドル(3億5520万円)を一気に上回ったことが話題になっている。セリーナの獲得賞金は日本円にして、実に約96億円だと聞く。金で何かを語ることは好きではないが、トップ・プロ選手のすごさがよく分かる例えであろう。

 大坂は、トップへの扉を開けた。どんな未来が待ち受けているのか楽しみだ。その人となりは日本テニスの未来をも左右する。どうか初優勝の「初心」を忘れずにいてもらいたい。(産経新聞特別記者 佐野慎輔)