新型アイフォーン、スマホ伸び鈍化で買い替え狙う 米中貿易対立が影

 
新型アイフォーンを発表する米アップルのティムクックCEO=12日、カリフォルニア州クパティーノ(AP)

 米アップルが発表したスマートフォン「iPhone(アイフォーン)」の新製品には、スマホ販売全体の伸びが鈍化する中、今後も成長が見込める大画面タイプの市場に新型機を投入して韓国勢などのライバルを突き放す狙いがうかがえる。アップルは好業績を牽引するアイフォーンの利益確保を図るが、トランプ米政権と中国との貿易対立が前途に影を落とす。

 「とびきりの進化を遂げたアイフォーンだ」

 米西部カリフォルニア州の本社で12日に開いた発表会で、ティム・クック最高経営責任者(CEO)は新機種への自信を示した。

 新たな3機種は、旧型機では画面の「枠」として使われていた部分にもディスプレーを拡大。最上位機の「XSマックス」が同社で過去最大の画面を備えたほか、「XS」や「XR」が旧型の「8プラス」より本体を小型にしながらも、画面サイズを大きくした。

 新たな高速CPU(中央演算処理装置)も搭載し、高解像のAR(拡張現実)を使った次世代ゲームなどにも対応できるという。

 米調査会社IDCによると、世界のスマホ販売台数は昨年の15億台から2021年に17億台と2億台程度の伸びにとどまる。ただ、画面が5・5~7インチの大画面スマホは同年まで約18%の成長が見込まれる。

 多くのメーカーが大画面化を進め、韓国サムスン電子が先月、新機種を発売。米グーグルも近く新型を発表するとの観測がある。メーカーは大画面・高機能化で高単価の機種への乗り換えを促し、アップルも新製品投入で高級スマホ市場の足場固めを狙う。

 アップルの業績は好調そのものだが、貿易対立は懸念材料だ。トランプ政権は中国からの2千億ドル(約22兆円)相当の輸入品に高関税を課す準備を終えた。発動されれば、腕時計型端末「アップルウオッチ」やスピーカー製品などが対象となるとして、同社は米政府に再考を求めている。

 中国など海外企業と緊密な部品調達網を築いてきたアップルだけに、米中の対立激化が同社の株価を揺らす展開が続きそうだ。

(クパチーノ 塩原永久)