【中小企業へのエール】カジノは必要か 世界水準で、日本らしいショーが不可欠
□旭川大学客員教授・増山壽一
先の国会で法律が成立し、日本にようやくカジノを含む統合型リゾート(IR)施設が建設されようとしている。日本に3カ所程度認定されることをにらんで、誘致を目指す自治体と開発業者がどんな施設を作るべきか、真剣な議論が行われようとしている。
なぜ日本にIRが必要かという際に、日本には夜楽しめる施設があまりにも少ない、という外国人からの声をあげる人が多くいる。確かにおいしい食事をして、せいぜいカラオケに行くぐらいしかなく、ミュージカルやコンサートも大都会にしかない。しかもいつも満席で予約なしで入れるわけではなく、その終了時間が世界標準からするとあまりにも早すぎるという。
しかし本当にそうだろうか。外国の友人は渋谷や新宿、札幌すすきの、福岡の中州で夜遅くまで食べ飲み歩き、時にバッティングセンターやゲームセンターなどもよく知っている。
世界をいろいろ仕事で回った際に、カジノがあればそこを見学した。そこで知ったことは、カジノだけでは、やがて寂れ入場者はいつしか地元の時間と少しばかりのお金をもつ高齢者だけになってしまうということだ。そこで併設されるホテルやホールでのイベント、ダンスや手品、各種の華やかなショーを多く興行しているIRのカジノの存在は極めて限定的だ。
日本のどこにIRができるにしても、そこでどんな併設したショーができるのか、世界的な水準でしかも日本のローカルの良さを宣伝したものがそろえられるかが勝負になる。
地中海やカリブ海を巡る豪華貨客船の中にはカジノもあるが、それよりも楽しい企画が連夜催される。世界の多様なお客を楽しませるため知恵を凝らしている。
例えば、風刺的にパントマイムや代表的な音楽で面白おかしくショーにしていく。さあ日本の出番となる。どんな格好でどんなことを演ずるのか。ちょんまげ姿とかねずみ色のスーツ姿のサラリーマンだといやだなと思っていたら、なんと「伊東に来るならハトや。ハトや」の軽快なリズムに乗って浴衣姿のダンサーが踊るのだった。みな拍手喝采。
日本にできるIRで、どんなショーをするか真剣に楽しく考える時期だ。
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【プロフィル】増山壽一
ますやま・としかず 東大法卒。1985年通産省(現・経産省)入省。産業政策、エネルギー政策、通商政策、地域政策などのポストを経て、2012年北海道経産局長。14年中小企業基盤整備機構筆頭理事。17年4月から旭川大客員教授。日本経済を強くしなやかにする会代表。56歳。
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