デンソー、「コネクテッドカー」の開発組織増強 3年内に人員倍増
トヨタ自動車グループの部品大手デンソーがインターネットに接続し、多彩なサービスを受けられる「コネクテッドカー(つながる車)」などの市場拡大をにらみ、ソフトウエアの開発組織を増強することが24日、分かった。今後3年以内に開発組織の人員を倍増するほか、欧米やアジアに同様の拠点を広げることも検討する。つながる車市場をめぐり、海外IT大手など異業種企業との競争が激化することに備える。
デンソーは昨年4月、つながる車をめぐる移動サービスに必要なソフトなどの開発を加速するため、横浜市に「デジタルイノベーション室」を設置。現在、約50人が開発に従事しているが、さらに社内外からIT人材を集めて約100人に倍増する。同様の組織を、売上高の約半分を占める海外に展開することも視野に入れる。
既にネットにつながる商用車の走行状況やドライバーの運転状態を把握し、安全運行を効率的に管理するシステムを開発するなど、実績の積み上げを急いでいる。今後も、ソフト開発を通じて移動サービスの商機を取り込む。
ソフト開発には、短期間で開発から性能の検証まで一気に行う「アジャイル(俊敏な)開発」を採用。IT企業が集積する米シリコンバレーに根付く開発手法で、デンソーでは現在、7チームが1週間単位で開発と検証を繰り返している。開発は設計を変更する前提で実施しており、「(次世代車市場の)変化に柔軟に対応できるかが勝負の分かれ目となる」(成迫剛志デジタルイノベーション室長)からだという。
つながる車の進化や運転の自動化などが進む「自動車産業の大変革期」の波は部品業界にも押し寄せ、各社は製品を売り切る従来型のビジネスモデルからの転換を迫られている。新たな主戦場は次世代車で人や物の移動を便利にするサービスで、この分野で事業拡大を狙うボッシュなどのドイツ部品大手がサービスやソフト開発で攻勢をかけている。
デンソーも移動サービス関連の欧米ベンチャーや東芝グループのソフト開発会社に出資するなど、トヨタグループ内外との連携策を矢継ぎ早に打ち出してきた。ただ、それだけでは開発スピードの向上に限界がある上、社内に開発ノウハウの蓄積が進まないと判断。シリコンバレー流のソフト開発で生き残りを目指す。(臼井慎太郎)
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