溶接技術を可視化、継承後押し 今野製作所 勘や経験をデータに
油圧機器開発製造の今野製作所(東京都足立区)は、精密板金加工のエー・アイ・エス(同江戸川区)と共同で、培ってきた溶接技術の可視化に取り組む。ベテランの経験や勘に頼りがちな溶接のノウハウを若い世代に確実に継承させるとともに、品質の向上にもつなげる。
国の2017年度補正予算に盛り込まれた「ものづくり・商業・サービス経営力向上支援補助金」に採択された。
具体的には、溶接作業の様子を複数のセンサーやカメラで記録。それを3次元(3D)CAD(コンピューター利用設計システム)ソフトに落とし込み、パソコンなどで見られるようにする。
1947~49年生まれのいわゆる団塊世代は既に町工場ではベテランの域を超え、すでに退職したケースも少なくない。半面、少子化に伴う数年の人手不足から中小企業での後継者難が深刻さを増している。
そのため、生産現場で即戦力として働くためには、「若手社員が1日でも早くベテランの熟練した技を身に付ける必要に迫られている」(今野製作所の今野浩好社長)という。
今野製作所はエー・アイ・エスなどととともに、2016年4月から、情報技術(IT)を活用した共同受注、生産の取り組みを始めている。相互の生産や出荷といった情報を共有し、発注元の顧客からは1社に発注したかのようなかたちを取っている。今回はこの取り組みをベースに、両社が共通で抱える生産現場の課題解決にも取り組む。
製造業の現場では、IoT(モノのインターネット)の活用で複数の工作機械をネットワークで連携し、稼働状況を遠隔で常時把握することにより、仕掛品の滞留や不良品の発生の減少を目指す取り組みが進んでいる。
ただ、溶接などといった人の手による要素が大きなものづくりの基盤技術の部分では、個人の技量によって出来映えが左右されやすく、定量的な評価が難しかった。
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