【茨城発 輝く】「よそ者だから気づいた」特産品の魅力 Oaraiクリエイティブマネジメント
茨城県大洗町のショッピングモール「大洗シーサイドステーション」。その中で、ひときわにぎわうのが、県の特産品を販売する「大洗まいわい市場」だ。扉を開けると、所狭しと並んだ茨城の「恵」が目に飛び込んでくる。大洗町を舞台にした人気アニメ「ガールズ&パンツァー」(ガルパン)のキャラクターがあしらわれた特産品も特徴的だ。
若さの勢いで開業
運営するのはOaraiクリエイティブマネジメント。2009年に設立された同社は、大洗まいわい市場を筆頭に、ガルパングッズの販売や展示を行う「大洗ガルパンギャラリー」といった店舗の運営を手がけながら、観光客を誘致するためのイベントを企画している。社長の常盤良彦氏(48)は「茨城の農畜産物のおいしさに驚き、もっと知ってもらわなければならない」という思いから、同社を立ち上げたという。
常盤氏は神奈川県出身だが、妻の希望で茨城県に移住することになった。住み始めて、県産のコメが今まで食べてきたものと比較にならないほどおいしく、野菜や肉も質が高いと感じた。そして茨城の農畜産物は魅力の塊であるにもかかわらず、PRする会社がほとんどないことに気づいたという。
大洗町商工会青年部に所属し、同世代の仲間3人と2009年5月、地元特産品をPRするためにOaraiクリエイティブマネジメントを設立。生産者を集め、大洗まいわい市場について説明会を開き、委託販売という形式で生産者に出品を募り、同7月、市場は開業した。
常盤氏は「よそ者の自分だから、県の特産品の魅力に気づけた。加えて仲間の若さと『バカさ』で後先考えずに勢いよく動けたことが、開業につながった。『よそ者、若者、バカ者』の力だ」と笑って振り返る。
しかし市場開業から約1年半後の11年3月、東日本大震災が店を襲った。港に面した店に津波が直撃。機材がひっくり返り商品は散乱、床は泥で見えなくなっていた。「店はぐちゃぐちゃ、原発事故で風評被害が出るのは間違いない。もうやめよう」と本気で考えたとき、生産者からたくさんの応援メッセージが届いた。
常盤氏は「こんなにメッセージをもらったらやらないわけにはいかない。絶対やってやる」と再起を誓った。
足を運ばせる工夫
店自体は同7月に再開できたが、客足と売り上げは確実に減っていた。そんな中、常盤氏は客単価は上がっていることに気づく。「お店に足を運んでもらえさえすれば、買ってくれる。復興を応援してくれる」
そう確信して、思わず足を運びたくなるようなイベントを次々に展開した。約100人の占い師を集めたイベントや、ご当地プロレスなど多種多様なコンテンツを披露して客を集めた。品物をPRして「買ってもらうこと」ではなく、おもしろいイベントを開催し「足を運んでもらうこと」に注力した。
ガルパンの企画が舞い込んできたのもそのころだった。当初は「手伝い」という形で、会社ではなく個人として携わっていたが、次第にのめり込み、キャラクターが描かれたラッピングバス、電車運行の企画を主導するようになり、ガルパンブームの仕掛け人の一人になっていたという。今では大洗シーサイドステーションの2階で、大洗ガルパンギャラリーの運営を同社が担っている。
「これからも茨城の特産品を知ってもらえるように、質の高い商品と、おもしろい企画でお客さんを呼び込み続ける」と語る常盤氏の挑戦はまだまだ続きそうだ。(永井大輔)
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【会社概要】Oaraiクリエイティブマネジメント
▽本社=茨城県大洗町港中央11-2 ((電)029・266・1147)
▽設立=2009年5月
▽資本金=100万円
▽従業員=12人(18年9月時点)
▽事業内容=地場産品の販売、地元土産の販売、開発、イベント企画など
□常盤良彦社長「いかに気持ちよく周りを巻き込むか」
--移住して茨城の農畜産物の魅力に気づいた
「人生で一度も訪れたことのなかった茨城県に来て、コメを筆頭に農畜産物のおいしさに感動した。同時に『こんなにおいしいのに、なぜもっとPRしないんだ』と不思議に思った。これはPRしない手はないと、企業設立を考えた」
--見ず知らずの土地でどのように会社を立ち上げたのか
「町の商工会青年部に入って同じ思いの仲間を探した。大洗町の人が良い意味でおせっかいだったこともあり、町の人たちに助けられながら、人とのつながりをつくることができた。大洗まいわい市場を立ち上げるときも、生産者一人一人と話をする時間のかかる方法をとったが、出品に協力してくれる生産者が、他の生産者にも声をかけてくれたおかげで、スムーズに開業できた」
--東日本大震災で市場が大きな被害を受けた
「震災のときはもうだめだと思った。ようやく市場が軌道に乗って、これからというタイミングでの被災。本気で諦めかけたが、生産者の方からたくさんの応援をもらった。『ともに復興へ向けて進んでいきましょう』『まいわい市場の復活は私たちの原動力です』という声をもらい、やめるわけにはいかないと強い気持ちを持てた。周囲の“おせっかい”もあり、半年たたずに店舗を再開することができた」
--知らない土地に来て、得たものは
「会社の立ち上げ、店舗の復興、ガルパンやイベントの企画などあちこち奔走したおかげで、信頼できる仲間を得た。どんなときも、いかに気持ちよく周りを巻き込むか、自分が巻き込まれるかが『カギ』だと感じた。今後もこの姿勢は忘れずに、楽しく巻き込み、巻き込まれながら、大洗町を、茨城県を盛り上げていきたい」
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【プロフィル】常盤良彦
ときわ・よしひこ 江戸川大卒。1994年、大手自動車メーカーに入社。99年に茨城県に移住。2009年Oaraiクリエイティブマネジメントを設立し、大洗まいわい市場を開業。48歳。神奈川県出身。
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≪イチ押し!≫茨城県産「紅はるか」の干し芋ようかん
Oaraiクリエイティブマネジメントは土産品の開発にも注力している。茨城県の特産品、干し芋をより多くの人に楽しんでもらうため、1人でも食べやすいように、小分けにした干し芋ようかん「べにこいも」を開発した。
県産サツマイモ「紅はるか」のみを使用。最大の特徴はようかんに含まれる芋の量だ。干し芋のペーストだけでなく、角切り、平干しといった3種類の形状でふんだんに練り込み、紅はるかの含有量約40%を誇る。
大洗のお土産といえばこれという特産品が極端に少ないことに着目。地域の特産品、干し芋を平干しのままではなく、加工して高級感のある土産品にすることを目指した。「どうしたら気軽に食べてもらえるか」という考えから、1、2人で簡単に食べきることができ、高級感も持たせたようかんが生まれたという。4個入り1300円。
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