ECで特産品拡販、地方創生へ サイネックス・村田吉優社長

 
サイネックス・村田吉優社長

 東京一極集中を是正し、地方を活性化させる「地方創生」は人口減少に見舞われている日本にとって、必要不可欠な取り組みだ。サイネックスは、官民協働型の行政情報誌「わが街事典」を発行するなど、地方創生に向けた事業を多角的に進めている。今年創業65周年を迎えた同社の村田吉優社長に事業の現状と今後の展望について聞いた。

 --「地方創生のプラットフォームの役割を担う社会貢献型企業」を基本理念にしている。地方創生にフォーカスするのはなぜか

 「東京一極集中を放置して地方を活性化しないと、日本が先細りして衰退してしまう恐れがあるためだ。このままだと、日本の人口は2050年に9000万人、2100年に5000万人に激減するとの試算もある。これを避けるには地方に移住して活性化する必要がある。行政機関を地方にダイナミックに移転するなどして東京一極集中に歯止めをかけることが大切になるが、これはわれわれ民間企業ができる話ではない。サイネックスは、50音別電話帳事業を通じて地方には大変お世話になってきたという思いがある。われわれの取り組みが地方活性化に少しでもつながればと思い、事業を進めている」

 --2006年から始めた「わが街事典」はその代表的な取り組みといえる

 「その通り。『わが街事典』は、地方自治体の提供する公共サービスを情報誌として編集し、自治体と共同で住民に無償で発行している。財源は地域の事業者からの広告収入で賄うので、自治体は財政負担なしに住民に行政情報を提供できる。現在までの協定自治体数は860を超え、発行を完了したところは820に達する。自治体の広報プロモーションをビジネス化し、なおかつ地方創生に資する取り組みだ」

 --「わが街事典」以外の取り組みは

 「『わが街事典』を自治体に水平展開してきたが、同時に垂直展開する取り組みも進めている。具体的には、ICT(情報通信技術)を活用したウェブソリューションを軸にした事業だ。自治体との信頼関係をもとに、クラウド型行政情報発信事業やふるさと納税支援事業などさまざまなソリューションを手掛けている。これらの事業の多くは、「わが街事典」と異なり、自治体に予算を付けてもらうモデルとなる」

 --自治体の反応は

 「低コストで行政の効率が上がることを訴求しているが、最近受け入れてくれる自治体が増えてきている。『わが街事典』も当初は苦労したが、事業開始3年以降は軌道に乗って黒字体質になった。ウェブソリューションも現在、軌道に乗る前の過渡期にあると考えている」

 --次の一手は

 「ICTの仕組みだけでほとんど人手をかけずに成り立つ事業を展開していきたいと考えている。今取り組んでいるのがEコマース(電子商取引)。地方の特産品をBtoCで販売する事業を始めていて、これをBtoB(企業間取引)の領域に拡大するとともに、リアルの領域にまで広げていきたい。地方の特産品が外部に売れることは、ストレートに地方創生に役立つことにつながる」

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【プロフィル】村田吉優

 むらた・よしまさ 早大政経卒。三重大大学院博士課程修了。1978年商工通信(現サイネックス)入社。81年取締役、97年から現職。68歳。三重県出身。

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【会社概要】サイネックス

 ▽本社=大阪市中央区瓦屋町3-6-13

 ▽設立=1966年2月

 ▽資本金=7億5000万円

 ▽売上高=129億円 (2018年3月期連結)

 ▽事業内容=広告業、出版業、印刷業、情報メディア事業