【スポーツi.】スポーツ界への企業投資促す戦略必要
米メジャーリーグベースボール(MLB)ポストシーズンが開幕した。レギュラーシーズンとは裏腹にスタンドのファンは総立ちになって地元チームに声援を送る。本当の戦いはこれから続く。(帝京大学准教授・川上祐司)
ここ3年間、MLBアリゾナスプリングトレーニングキャンプに同行し、選手の調整方法は日本とアメリカでは大きく違うように感じる。残念ながらメジャー1年目の大谷選手はトミー・ジョン手術に踏み切った。原因はわが国の野球環境に影響があったのではないか。その影響は単に選手だけの問題ではなくスポーツビジネス全体の問題でもある。
営業活動は通年で
MLBは来シーズンのスケジュールを既に8月に発表した。来年2月末から始まるスプリングトレーニングキャンプのスケジュールも9月に発表した。ちょうど小職ゼミナール恒例のアリゾナ合宿でスコッツデールスタジアムを訪問したときだ。
このスタジアムではサンフランシスコ・ジャイアンツがスプリングトレーニングキャンプを実施するが、昨年よりも約3カ月も早い発表にこの地も大いに盛り上がる。ポストシーズンでにぎわう中でも球団のセールス部門は本格的に営業活動を開始できるのである。それはチケットセールスだけの話ではない。スポンサーシップを含めたスポーツビジネスは年間を通して活発化している。
アリゾナ滞在時、ナショナル・フットボールリーグ(NFL)のプレシーズンゲームを観戦した。9月に開幕したNFLレギュラーシーズンのホームゲームは僅か8試合しかない。MLBの81試合とは裏腹にその希少性からゲームバリューは高まるばかりだ。地元アリゾナ・カージナルスのホームスタジアム「University of Phoenix Stadium」にはフットボールシーズンを待ちわびた多くのファンが押し寄せた。
その1週間後、このスタジアムは「State Farm Stadium」に改名されたニュースが届く。何とState Farm Insurance(ステートファーム保険)が18年間のネーミングライツ(命名権)契約(金額は非公開)を締結したという。
決して新しいとはいえないこのスタジアムに、なぜステートファームは投資したのか。実は23年に3度目のスーパーボウル、24年には再びNCAAバスケットボール全米選手権ファイナル4、さらには26年までにNCAAカレッジフットボール選手権セミファイナルゲームが3回もこのスタジアムで開催されることが決定していたのである。
共創的な戦略展開
アメリカでは相変わらずスタジアムやアリーナの建設ラッシュが続いている。既存のスタジアムでも今後の一大スポーツイベントを行政とともに誘致して10年先のスポーツイベントのスケジュールを確定させることで「スポーツ・ベニュー」としての価値を高めている。その動向にスポンサー側も果敢に反応した共創的なスポンサーシップ戦略を展開しているのである。
わが国では、19年のラグビーワールドカップに続き、20年に東京オリンピックが開催される。しかしこれら一大ナショナルスポーツイベントの開催も一過性に過ぎず、その後の景気低迷が危ぶまれている。
国内プロスポーツリーグおよびチームビジネスの永続的拡大に向けたマーケティング戦略が望まれる。企業は決してスポーツへの投資にネガティブではない。その投資価値が見いだせないだけなのである。せめて翌シーズンのホームゲームスケジュールぐらいは早期に発表してくれることを期待したい。
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【プロフィル】川上祐司
かわかみ・ゆうじ 日体大卒。筑波大大学院修士課程スポーツシステム・健康マネジメント専攻修了。元アメリカンフットボール選手でオンワード時代に日本選手権(ライスボウル)優勝。富士通、筑波大大学院非常勤講師などを経て、2015年から帝京大経済学部でスポーツマネジメントに関する教鞭をとっている。著書に『メジャーリーグの現場に学ぶビジネス戦略-マーケティング、スポンサーシップ、ツーリズムへの展開』(晃洋書房)がある。53歳。大阪府出身。
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