消費税増税でポイント還元、課題山積 金融業界歓迎も高齢者対応など焦点
来年10月の消費税増税に伴う経済対策として政府が検討する中小小売店でクレジットカードなどで決済した消費者への2%分のポイント還元策について、金融業界は現金を使わないキャッシュレス決済の推進に弾みがつくと歓迎する。一方、カードを持たない高齢者への対応など課題も指摘されており、業界としての今後の対応も焦点になる。
政府が2019年10月の消費税率引き上げに合わせて消費者にポイントを還元する景気対策で、クレジットカード会社に対し、小売りなどの加盟店から受け取る手数料を引き下げるよう要請する方向で調整に入ったことが、18日分かった。ポイント還元は、クレジットカードなど現金を使わないキャッシュレス決済をした買い物客が対象だ。政府は店側の負担を軽減してクレジットカードの導入を後押しし、消費者が幅広くポイント還元を受けられるようにする。
「多くのキャッシュレス手段が対応できる仕組みになるのが望ましい」。全国銀行協会の藤原弘治会長(みずほ銀行頭取)は18日の会見で、ポイント還元策への期待を語った。
もっとも、課題も山積する。還元を受けるにはクレジットカードやスマートフォンを持っていることが前提で高齢者や低所得者が恩恵を受けにくく、小売店も決済ごとにカード会社などに支払う手数料など新たな負担が生じる。
藤原会長は「税の公平性なども含めて非常に難しい話でもあり、積極的に意見発信したい」と述べ、金融業界でも対策を練る考えを示した。
キャッシュレス化が進めば、顧客の利便性向上や金融機関のコスト削減につながる。みずほ銀行は現金を取り扱うコストが日本の産業界全体で年間8兆円かかっており、キャッシュレス化で人件費などが減れば、4兆円程度を削減できると試算する。
だが、キャッシュレス決済の比率は隣国の韓国で90%、中国60%なのに対し、日本は18%と出遅れる。ATM(現金自動預払機)網が張り巡らされ、消費者に便利で安全な現金の信頼性が高く、店舗側も端末の設置に費用がかさむため、導入に二の足を踏んでいるからだ。それだけにポイント還元策は消費者と店舗の双方へのキャッシュレス化のインセンティブとなる見通しで、消費者への浸透や導入店舗の裾野の広がりなどへの追い風になりそうだ。(大柳聡庸、万福博之)
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