【eco最前線を聞く】非常食を日常的に消費、廃棄ロス削減へ

 
非常食の循環システム付宅配ロッカー「イーパルボックス」

 非常食を日常的に販売する循環システム付宅配ロッカーが発売されて1年、共同開発した飛島建設や宅配ボックス最大手のフルタイムシステム(東京都千代田区)などがマンションやビルへの設置を呼び掛けている。宅配ロッカーがあることで受取人不在時の再配達をなくし、トラックからの二酸化炭素(CO2)排出と宅配ドライバーの配達時間の削減に貢献。非常食の賞味期限切れによる廃棄ロスも防ぐ。普及に取り組む飛島建設企画本部新事業統括部新事業開発Tの科部元浩課長に設置メリットなどを聞いた。

 宅配ロッカー活用し販売

 --開発の狙いは

 「この宅配ロッカーは『E pal BOX(イーパルボックス)』といい、Eはemergency(非常時、緊急)やenvironment(環境)などを指す。宅配ボックスに食料品の自動販売機能を付加することで、防災備蓄品が売り上げにつながる。一方で地震など災害時には販売ロッカーの扉を自動開放し非常食として提供する。非常食を日常的に食べているので、非常時には『あって良かった』と安心できる」

 --共同開発に関わった企業の役割は

 「災害大国・日本で防災対策は喫緊の課題であり、『防災のトビシマ』として建物の耐震などの技術は確立している。その上で、国土強靭(きょうじん)化で示されている『ハード・ソフトの組み合わせ』で貢献したいと考えたが、食料品の提供・運用は無理。そこで生活協同組合パルシステム東京と防災をキーワードに協業し、食品の提供を担ってもらうことにした。宅配ロッカーはフルタイムシステムの既存製品を活用、販売は飛島の100%子会社E&CSが担う」

 --これまでの販売実績は

 「第1号機は昨年8月1日、飛島本社に設置した。インスタントラーメンやカレーライス、中華丼など日持ちする食品を150~400円で販売(給料天引き)している。昼食や夜食用に購入する社員も多く、私も愛用している。宅配ロッカーを設置できるスペースをエントランスなどに確保しているマンションは少なく、(宅配物流量の増大と人手不足という)宅配クライシスにもかかわらず後付けは難しいので、新築の計画段階から声をかける必要がある。このため導入が決まるまで時間がかかる。今は案件をいくつか抱えており、2号機を年内に受注できそうだ」

 地域防災の機能担う

 --今後の展開は

 「オフィスが入るビルにも需要があると判断、新たな提案としてビル内への設置を呼び掛けている。会社のBCP(事業継続計画)の一環として効果を発揮するほか、設置により地域防災の一部機能を担える。会社に宅配ボックスがあることで社員の個人的な荷物を受け取ることができるし、宅配業者への荷物引き渡しも可能になる。1人暮らしや共働きの社員にとって利便性向上という福利厚生にもつながる。テナントにも魅力で、ビルオーナーは他物件との差別化を図ることができる」

 --事業の多角化にも貢献する

 「今後の建設市場を見据えると、2020年以降は本業の収益下降が避けられず、新事業の創造、事業の多角化で賄う計画を立てた。その一環として、ビルを建てた後も顧客とつながりを維持できる事業の創出が不可欠で、イーパルボックスはその役割を担える。環境意識の高まりと多発する自然災害に備える意味から普及させなければいけない」(松岡健夫)

【プロフィル】科部元浩

 しなべ・もとひろ 日本大学理工学部卒。1997年飛島建設入社。以来、建設現場の管理者として従事、2016年経営企画室新事業統括室課長、17年企画本部新事業統括部新事業開発T課長。この間、06年に第48次南極地域観測隊設営一般(建築)として参加。44歳。神奈川県出身。