妊娠・出産、若い女性に学びの場 ラヴィコーポレーション・高須賀千絵代表

 

 女性にとって人生の一大イベントといわれる妊娠と出産について、若い女性たちに学んでもらう機会を提供しているのがラヴィコーポレーションだ。同社を立ち上げたのは代表取締役で助産師の高須賀千絵さん。「妊活と女性の体を考える会社」をコンセプトに、女性の体作りと、産んでから働く環境を整えるための講座や研修を実施している。

 働きながら起業

 看護大学生だったころ、産科で妊産婦に付き添って学習する中で、多くの人が妊娠、出産のしっかりした知識を持たず、また、赤ちゃんが無事に生まれてくるのは当たり前だと考えて出産に臨んでいることに驚いた。

 「食生活の乱れや女性ホルモンのバランス、『冷え』など、改善して体を整えることで、出産自体や出産後の体の戻りも違う」と高須賀さん。しかし、若い世代の女性が、自分の体や将来の出産について学ぶ場はほとんどない。さらに、働く女性が増えて出産が高齢化する中、出産のリスクが高まる現状を何とか変えたいと「やっている人がいないのならば、起業してやればいい」という思いが芽生えたという。

 大学卒業後は、看護師、助産師として医療現場で働きながら、起業のことは常に頭にあった。迷いはなかったが、新人看護師としての仕事は忙しく、また、起業に必要な知識もまったくなかった。

 そこで、大阪市の女性起業支援制度でレンタルオフィスを借りて、病院での夜勤明けに“出勤”。忙しい中で夢を忘れそうになる中、自らを奮い立たせながら、サポートをもとに、法律や税務、事業計画書の作り方など会社設立のノウハウを学び、2011年に会社を設立した。

 まず取り組んだのは、若い女性に出産や体について学んでもらう講座を開くことだ。知り合いのやっているアロマサロンや婚活セミナーなど、独身女性が集まりそうなところで「妊娠前の体をどう作るか」「女性ホルモンの乱れを正すにはどうするか」といったテーマで講座を開催した。

 近年は「妊活」という言葉が定着しているが、当時はそういった取り組みもほとんどない。参加者からは「相手もいないのに、妊娠のことなど考えられない」と言われることもあり、考えていたような手応えは得られなかった。

 それでも、大きな出費が必要な事業でもなかったため、助産師の仕事などを掛け持ちしながら、2人の仲間と地道に活動を続けた。

 企業研修に注力

 転機となったのは起業から約2年後。講座以外に何か手軽に取り組めることがないかと考えて手掛けたのが、漢方のハーブティーや薬膳ご飯など、体にいい食品の商品化だ。

 パッケージの製作や業者への発注、広告宣伝費など、必要な経費も大きくなったほか、新たな事業を始めることで離れていく仲間もいた。「大変だったが、ビジネスについてシビアに考え始めた時期だった」と振り返る。他にも妊活の指導者を育成する学校や企業向けのマナー研修や女性の働き方についての研修受託など、事業を拡大していった。

 今年3月には、セミナーなどを継続的に行う拠点として、マタニティーサロン「HugMe(はぐみ)」を大阪市内で開業した。妊娠前の妊活や妊婦向けには出産や育児について、さらに産後向けには母乳ケア、復職後の「保活」(保育園探し)まで、幅広くイベントを開催。

 今後、注力したいのが、企業向けの研修事業だ。働く女性に最もアプローチできるのが、企業との連携。高須賀さんは「女性が長く働くためには、キャリアのビジョンに体のことや結婚出産といったライフイベントを入れて考えなければいけない。企業と一緒に、女性が働く環境作りができれば」と話している。

【プロフィル】高須賀千絵

 たかすが・ちえ 愛知県立看護大(現・愛知県立大看護学部)卒。総合病院や個人病院での助産師をしながら、2011年5月に「ラヴィコーポレーション」を設立。これまでの講座、研修などの受講生は5000人以上に上る。近畿経済産業局女性起業家応援プロジェクトLED関西第1回ファイナリスト。大阪商工会議所第2回大阪サクヤヒメ活躍賞受賞。36歳。兵庫県出身。

【会社概要】ラヴィコーポレーション

 ▽本社=大阪市中央区博労町4-5-6 野上ビル8階

 ▽設立=2011年5月

 ▽資本金=500万円

 ▽従業員=9人

 ▽事業内容=産前産後セミナー、女性活躍のための企業研修、マタニティセラピスト育成研修