【スポーツi.】eスポーツ、集客拡大に活用を

 
「東京ゲームショウ2018」で行われたeスポーツの国際親善試合でプレーするオランダと日本の代表選手=9月20日、千葉市の幕張メッセ

 eスポーツ。最近、テレビの報道番組の特集などで取り上げられることが増えている。「e」とは、エレクトロニクスのこと。コンピューターやビデオゲームなど、デジタル空間でのゲームをスポーツと同じく競技として行うものをeスポーツという。しかし、そもそもスポーツとは、人間の身体能力を使うものではないのか。(フリーランスプランナー・今昌司)

 コンピューターやビデオゲームは、相手と競い合うゲームでも、モニター画面上の仮想空間で競うものであり、プレーヤー自らが戦うことはない。頭脳を用いた競技もスポーツの一つというのであれば、デジタル空間でも、プレーヤーが戦略や戦術を駆使して競うゲームも、確かにスポーツといえるのだろう。

 楽しさは本質価値

 スポーツを身体能力を用いて楽しむもの、と当然の如く捉えている人には、eスポーツをスポーツとは捉え難いかもしれない。それは、ゲームが単なる遊びであるという考えがあるからであろう。だが遊びは楽しいからこそ、やりたくなる。

 その楽しさとは、スポーツの本質価値でもある。身体能力を使って、苦しみ抜いて、競技における勝利を勝ち取る、という意味ではない。楽しむ、そして競い合う。そこに感動や喜びが沸き上がるのであれば、コンピューターやビデオゲームも、頭脳の戦いであるスポーツの一つとしても成り立つ。

 そうしたゲームが体力や反射神経や瞬発力などの運動神経も酷使するものであるとすれば、従来のスポーツとしての要素も兼ね備えていることになる。「eスポーツがスポーツなのか?」という論議もあるようだが、私はeスポーツを語るには、全く別の論議が存在していると考える。従来のスポーツを成長市場化していく上でのeスポーツの活用価値である。

 調査会社ニューズーによれば、現在の世界の市場規模は日本円にして約970億円。それが、3年後の2021年には1770億円と、倍近くにまで成長するという。この市場の大半を構成しているのは、10代から20代までの若者層。今、プロアマ問わず、スポーツ界ではスポーツ離れを深刻な懸念課題として取り上げているが、彼らはその張本人たちである。

 eスポーツには、従来のスポーツ界が狙うべき顧客層がいて、現在においてもJリーグの市場規模に匹敵するほどの金銭が動いているのである。さらにeスポーツには、「見る」スポーツとしても従来のスポーツをしのぐ集客力がある。eスポーツ先進国の一つである韓国では、2014年にソウルのスタジアムに4万人を集めてイベントが行われた。中国でも、通称“鳥の巣”に5万人の観客を集めている。もはやサッカーと同等の「見る」価値を示しているのだ。

 IOCも注目

 若者のスポーツ離れに歯止めをかけるべく、そうした顧客層の取り込みや新規開拓を目的として、従来のスポーツ組織やプロリーグは、eスポーツを新たな集客装置、価値の開発装置の如く活用し始めている。国際サッカー連盟(FIFA)はeワールドカップを開催し、アジアオリンピック評議会(OCA)は先のジャカルタでのアジア競技大会でeスポーツを公開競技として採用した。次回は正式競技となる。

 国内でも、Jリーグやプロ野球が、アメリカではいち早く4大プロスポーツがeスポーツに進出している。国際オリンピック委員会(IOC)とて、若者をひきつけるための戦略としてeスポーツに注目しているという。eスポーツを従来のスポーツと同等で扱うのではなく、スポーツの成長市場化を促す戦略的コンテンツとして捉えたらどうか。そこに協業や協働が生まれていけば、スポーツに新たな市場が生まれるかもしれない。

【プロフィル】今昌司

 こん・まさし 専修大法卒。広告会社各社で営業やスポーツ事業を担当。伊藤忠商事、ナイキジャパンを経て、2002年からフリーランスで国際スポーツ大会の運営計画設計、運営実務のほか、スポーツマーケティング企画業に従事。16年から亜細亜大経営学部ホスピタリティ・マネジメント学科非常勤講師も務める。