【高論卓説】ライザップ、「老青」相補えるか 立て直しの成否果たして
RIZAP(ライザップ)グループの急成長路線が逆回転を始めた。40歳の創業者、瀬戸健代表取締役社長は、71歳の松本晃代表取締役構造改革担当の手腕を借りて、立て直しに取り組む。(ジャーナリスト・森一夫)
その成否は、親子ほども歳の離れた2人のコンビネーションが功を奏するかどうかにかかっている。一般論で言えば、老と青の組み合わせは、老の経験、知恵と青の突破力がしっかりかみ合えば、鬼に金棒だが、今回は果たしてどうか。
RIZAPグループは14日に、2019年3月期の連結最終損益について、従来の黒字予想から70億円の赤字予想に修正すると発表した。これにより、成長路線に急ブレーキがかかり、広げ過ぎた戦線の縮小に転じることになった。
新聞などが報じているように、同社は、純資産より安い値段で会社を買収して、差額の「負ののれん」によって利益成長を図ってきた。しかし買収した業績の悪い会社が思うように立ち直らなければ、安物買いの銭失いになる。今回の事態は、半ば予想されていたものともいえる。
6月末に代表取締役に就任した松本氏が、何も知らずに入ったとは思えない。同氏は業績が停滞していたカルビーに招かれて、9年で見違えるような会社にして一躍注目された。カルビーの代表取締役会長兼CEO(最高経営責任者)を退くと発表すると、複数の企業から声がかかり、その中からRIZAPをあえて選んだ。
成功する経営者になるためのポイントについて、こう語っている。「この馬(会社)に乗ったら勝てるかどうか。ぼそっとした馬でも磨いたら意外によく走るかもしれない。その見極めが大事だ」
松本氏は若い瀬戸氏のポテンシャルを見込んだのだろう。何としても成功させたいという男気のようなものを感じる。瀬戸社長がいわば親の心子知らずにならなければ、よいのだが。
年長者は若手に、うるさいと思われかねないことも言う。先日、ミサワホームの創業者、三澤千代治氏から、昔、伊藤忠商事元社長の2代目伊藤忠兵衛氏から訓戒を受けた話を聞いた。1971年に当時最年少の33歳で株式を上場して、得意の絶頂にあるとき、面識のない伊藤忠兵衛氏から呼ばれた。何事かと思ったら、ネズミ退治を競う「4匹の猫」の話を聞かされた。一番若い猫は、どんなネズミも一発で捕まえると自慢した。2番目は、鳴くだけでネズミを撃退する。3番目は縁側で寝ているだけで、ネズミは寄り付かなくなる。一番年寄りの猫は「生まれてから今まで、ネズミなんか見たこともない」と言う。
伊藤忠兵衛氏は上には上がいるのだからおごってはいかんと三澤氏を諭したのである。この話は、9月に出版した自著の『三澤千代治の「遺言」』にも載っている。三澤氏は直ちに姿勢を正して自分の未熟さを謝した。
ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長が昔、まだ売り出し中だったころ、銀行を格付けして条件のよいところとの取引を増やそうとして、銀行との関係が緊張したことがある。
その時、当時アサヒビールの社長だった樋口廣太郎氏が、そんなことをするものではないと孫氏に助言した。これを孫氏もよしとして丸く収まった。
攻守そろった経営は、老と青がうまく相補えば可能になる。
◇
【プロフィル】森一夫
もり・かずお ジャーナリスト 早大卒。1972年日本経済新聞社入社。産業部編集委員、論説副主幹、特別編集委員などを経て2013年退職。著書は『日本の経営』(日本経済新聞社)、『中村邦夫「幸之助神話」を壊した男』(同)など。
関連記事