「パナソニックよ、あほになれ」 ファストリ柳井氏、愛ある故の異色進言
先月30日から今月3日まで、今年創業100周年を迎えたパナソニックが都内で開催した記念展示会で、ユニクロを展開するファーストリテイリングの柳井正社長兼会長が行った基調講演が異彩を放った。「世界一の会社に」「あほかと思われるような非常識な、高い目標を」「(企業向け事業である)BtoBではパナソニックは輝かない」など、一代で2兆円企業を築いた柳井氏ならでの言葉はパナソニックを鼓舞する内容となった。(中山玲子)
「約30万円の自動車を世界で10億台。300万円くらいの住宅を世界で10億軒。これを世界で売れば、33兆円の売上高になる」
柳井氏はパナソニックに、創業者の松下幸之助が唱えた、水道水のように良質なものを安価で大量供給する「水道哲学」に基づいて、世界の誰もが安心して乗れる自動車と安心して暮らせる住宅を提供するよう提案してみせた。
さらには、現在パナソニックが進めるBtoB事業の拡大にも注文。「津賀(一宏パナソニック社長)さんには申し訳ないが」と前置きしつつ、「電池の供給もいいが、BtoBではパナソニックブランドは輝かない。やっぱり(一般消費者を顧客にする)BtoC。アップルやグーグル、世界で輝くブランドはみんなBtoCだ」と強調した。
柳井氏がここまでパナソニックに「直言」するのはなぜだろう。ファーストリテイリングを売上高2兆円超に成長させた柳井氏は、家業の紳士服屋を引き継いだ数十年前、たくさんの幸之助の本を教科書のように読んだという。幸之助を「日本代表する偉大な経営者」としたうえで、「とても尊敬している、かつ大好きな人物」だと述べた。
そして、数ある幸之助の経営哲学でも、柳井氏がとくに影響を受けたのが「水道哲学」だったという。
実際に柳井氏は水道哲学に沿ったビジネスを展開した。ファーストリテイリングは、高品質のフリースやカシミヤセーターなどを低価格で世界の消費者に提供。こうした服のコンセプトを「ライフウエア」と名付け、「ライフウエアを大量にリーズナブルに圧倒的な早さで提供する、これが服の民主主義だ」とした。柳井氏は、こうした取り組みは、自ら「幸之助の思想とすごく似ている」と評している。
創業から100周年を経たパナソニックは、巨大化し縦割り組織が強力に働く、いわゆる大企業病に陥っているとされる。社長就任以降、頭を悩ませてきた津賀氏自身は今年、こうした組織に横串を刺す「クロスバリューイノベーション」を標語に掲示し、外部からも人材を積極採用するなどして、有機的な組織運営に向けたさまざまな取り組みを進めている。
こうしたパナソニックに、柳井氏は「ここにお集まりの数千人の社員に期待を伝えたい」としたうえで、「企業も人ももっとも重要なのは目標を高くもつ、しかも非常識な、こいつあほじゃないかと思うような目標をもつこと」と発破をかけた。幸之助については、「世界一のアントレプレナー(起業家)、世界一の経営者」だったと強調。そのDNAを引き継ぐはずの社員らに対し、「多くの日本人がパナソニックに期待している」と述べ、「大きな夢を描いてほしい」とエールを送った。
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