ブロックチェーンを利用した地図アプリ、登場へ 地図の進化は止まらない!

 
若き地図のエキスパート、HeperionLabFoundationのアイザックCEO。世界的に有名なイギリスの理論物理学者スティーブン・ホーキング博士から「一緒に働かないか?」と声をかけられていたとのこと

 現在の日本において、スマートフォンにデジタル地図のアプリをインストールしていない人はいないだろう。

 住所を入力すれば目的地の位置を正確に示し、GPSで現在地の確認もできる。使用費も掛からないため、何度でも気軽に確認できる。Googleマップのストリートビューが登場したことで、家にいながら指定した場所を探検することも可能になった。紙の地図を広げ、道を覚えている時代からすれば、信じられないほど便利な世の中になったと言える。

 さらに、デジタル地図が提供する価値は、アプリや探検にとどまらない。我々日々使用するグルメ、旅行、ショッピングのアプリにも、デジタル地図は導入されている。自動運転、ドローンなどの技術においても、デジタル地図はナビゲーションシステムの大役を担っている。

 このように、デジタル地図により、我々の生活は益々便利になって行くだろうが、人々の生活に深く根ざしている分、デジタル地図にまつわる課題も垣間見える。

 一つ目の課題は、地図の更新コストだ。地図は、「街」の進化に伴って更新を行われなければならない。2020年の東京オリンピックに向けて東京の街は建物も大きく入れ替わりを見せている。ベトナムやインドネシア等の新興国では頻繁に新しい道や建物が出来上がるため、新しい地図でもすぐ使い物にならなくなる。

 デジタル地図の会社は、情報更新のため莫大なお金を投下する。例えば、街中でたまに見かけるグーグルマップ専用車。機材込のお値段、なんと一台10億円にも及ぶという。その結果、デジタル地図データの利用料はどんどん吊り上げられている。実際、グーグルマップのデータ利用料は、2018年8月に14倍も値上がりした。また、コストを投下したからといって、1つの会社が世界中の地図の変化を捉えきることは不可能だ。

 そこでデジタル地図の会社に代わって、ユーザーが作るオープンソース型地図という考えが誕生した。「オープンストリートマップ」というサービスがその代表であろう。

 安いコストでリアルタイムの地図情報を更新できるオープンソース型の地図は、「次世代のデジタル地図」とも言われている。

 ところが、このオープンソース型地図に、二つ目の課題がある。情報の正確性だ。地図への情報提供はあくまでも一般ユーザーが行うため、情報の質の確保は難しい。

 そこで今回は、「更新コストと正確性」の二つの課題を同時に解決できる地図アプリを開発しているHyperion Lab Foundationに話を聞いてみた。Hyperion Lab Foundationは2018年にシンガポールで立ち上げられたプロジェクトであり、ブロックチェーン技術を活用し、分散型デジタル地図を開発している。

 ▽室内地図、ユーザー参加型地図にまずは着目

 Hyperion Lab FoundationでCEOを務めるアイザック・チャンさん。中国の一流大学で数学を専攻し、その後修士を飛び級して英ノッティンガム大学院でコンピューターサイエンス博士号を取得した。いわゆる、天才エンジニアだ。

 アイザックさんはHyperion Lab Foundationを立ち上げる前に博士課程で学ぶ傍ら、室内地図の需要に着目。在学中の2013年に「MAPXUS」(マップサス)という地図サービスを立ち上げた。

 室内地図は百貨店等にテナントを出す店舗、消防、レスキューなどに確実に需要がある。また、室内地図は室外以上に、絶えず変化している。したがって、「MAPXUS」はオープンソース型地図というシステムを取り入れている。

 「MAPXUS」は現在、グーグル社やアップル社にも地図データを提供するまで成長をしている。

 ▽ブロックチェーンを利用した未来型地図アプリ「Hyperion」

 しかし、「MAPXUS」も先述したオープンソース型地図の課題に苦戦していた。そこで、「MAPXUS」の進化型サービスとしてブロックチェーン技術を使った地図アプリ「Hyperion(ハイペリオン)」を提供するべく、アイザックさんは2018年にHeperion Lab Foundationを立ち上げた。アイザックさんは、博士課程卒業論文でハイペリオンの原型となる「分散型デジタルマップ」のアイデアをまとめたという。

 元々「MAPXUS」もオープンソース型の地図サービスではあるが、ブロックチェーン技術を使うことにより更なる進化を見せた。

 まず、ブロックチェーンの特性を活かしたハイペリオンは、データ改ざん等ができなくなり、正確な情報がより蓄積しやすくなった。従来型のデジタル地図よりも圧倒的な更新頻度を誇り、悪意の情報によって正しい地図情報が塗り替えられる心配もない。

 次に、トークンによるインセンティブ付けが可能となった。従来の地図では、地図データを提供したユーザーに何の報酬もないのが通常である。しかしハイペリオンでは地図データをアップロードしたユーザーに報酬(トークン)が渡される。この仕組みを、ハイペリオンではマップマイニングと呼ぶそうだ。

 なお、ここでいうトークンとは該当サービス内で使える通貨である。ポイントのようなものを想像頂けばわかりやすい。地図データを活用したい企業や個人は、地図データを購入する際にトークン支払いをすることが可能である。

 予定では、ハイペリオンが提携する店舗において、トークンを使った決済が可能となる。そのため、ユーザーはマップマイニングに参加するモチベーションが生まれやすい。

 2018年末にはユーザーが地図作成用画像をアップロードするためのアプリ「dMapper」がリリースする予定となっている。スマートフォンを使って簡単に身近な地図情報をアップロードして報酬を受け取ることができる。2019年前半にはこの集められた写真を使ったナビゲーション地図アプリもリリースされる予定だ。

 同社CMOのカイ・ローさんはこう言っている。

 「我々は日本のマーケットを非常に重要視しております。この分散管理型の地図アプリを使うことでみなさんの生活はより豊かになることでしょう」

 地図アプリは、時代のニーズに合わせて大きく進化を遂げるのである。(ジャイアント佐藤/5時から作家塾(R)

 《5時から作家塾(R)》 1999年1月、著者デビュー志願者を支援することを目的に、書籍プロデューサー、ライター、ISEZE_BOOKへの書評寄稿者などから成るグループとして発足。その後、現在の代表である吉田克己の独立・起業に伴い、2002年4月にNPO法人化。現在は、Webサイトのコーナー企画、コンテンツ提供、原稿執筆など、編集ディレクター&ライター集団として活動中。

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