人を辞めさせない仕組み作り 「教育」「評価」「労働環境」がなぜ重要なのか

 
「教育」「評価」「労働環境」がなぜ重要なのか(Getty Images)

 【マック&ユニクロ流人財育成】サービス業に限らず、社会では深刻な人手不足が訪れています。

昔は募集をかければ応募があり、欲しい「人財」を採用することができていました。

 私自身もマックの店長時代には「明るく元気な方」等、条件付きで採用をかけても理想とする人財を確保していたものです。

 それが今では生産労働人口の減少に伴う有効求人倍率の増加により、労働力を確保すること自体が難しくなってきています。

 また、サービス業の働く場所は増え続けており、人は応募する企業を選ぶことができる時代になっています。

◆まず「人が辞めない理由」をチェックしてみよう

 企業側は選ばれる会社・店舗にならなければいけません。

 そして入社した人を辞めさせずに育て、戦力にしていく必要があります。

 そのためにも辞めさせない仕組みを作る必要があります。

 仕組みを作るために、まずは人が辞めない理由を見ていきましょう。

 (1)キャリアステップが見える

 キャリアステップとは、社内での自分自身の将来像という意味です。

 それをイメージさせることができないと、将来が不安になり、イメージをしやすい会社に転職していきます。

 (2)短・中・長期の目標を持つことができる

 長期目標とは、先ほど述べたキャリアステップです。

 ただ、キャリアステップがあったとしても、目の前の業務にも注力してもらわなければなりません。

 短・中期の目標を持って業務に取り組んでもらうことで、モチベーションの向上にも繋げることができます。

◆一番のポイントは「人間関係」が良好かどうか

 (3)成長意欲が満たされる

 (4)自己重要感が持てる

 成長意欲や自己重要感は店長・社員・アルバイト等、雇用形態や役職に関係なく誰でも持っているものです。

 ただし、これらを引き出す仕組みが無い場合、上司の力量に任せることになります。

 上司とひとくくりに言っても、部下の成長意欲を引き出すことができる優秀な上司がいれば、できない上司もいます。

 成長意欲が無いと思う人がいるのであれば、それは会社がうまく引き出せていないだけなのです。

 (5)やりがいを感じられる

 やりがいは人によって違います。

 私がマックやユニクロで働いていた時代は、店舗の中で店長という役職が目指すべき姿であり、全員がここを目標にしていました。

 しかし今では、出世するということにやりがいを感じる人もいれば、そうではない人もいます。

 人によってやりがいを感じる箇所が異なるのです。

 企業は、やりがいを持たせる方法を複数考え、提示しなければなりません。

 (6)人間関係が良い

 ここが辞めない理由に一番影響しています。

 上司はもちろん、同僚との人間関係を形成することができなければ、退職する方は多いでしょう。

◆「罰則がないから」ではダメ

 教育・評価を仕組み化することにより、社内の人間関係を良好にすることができます。

 これらの辞めない理由を作るためには、「教育」「評価」「労働環境」を整備する必要があります。

 労働環境については賃金や労働時間等、法律に関わる部分が大きいと考えています。

 企業側は、法律の変化に沿って規則を改定しなければ罰則があるため、ビジネスを行う上では必然的に対応をしなければなりません。

 一方、教育と評価については個人の能力やモチベーションを向上させるためにも大切だと認識している企業が多い中、法律等で罰則の対象にはなりません。そのため、後回しにしてしまい着手しない企業も多くあります。

 だからこそ、教育と評価の制度を作ることが他社との差別化につながり、選ばれる企業になると共に、人が辞めない仕組みを作ることができるのです。

 仕組みを作るためには規模は関係なく、企業全体で取り組む必要があります。

 そして教育・評価で大切なのはPDCAを回すことであり、私はそれを「グローイング・サイクル」と呼んでいます。次回、グローイング・サイクルについて詳しく話していきましょう。

【プロフィール】有本均(ありもと・ひとし)

株式会社ホスピタリティ&グローイング・ジャパン社長
1956年、愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部入学後、大学1年からマクドナルドでアルバイトを始め、1979年、日本マクドナルド株式会社に入社。店長、スーパーバイザー、統括マネージャーを歴任後、マクドナルドの教育責任者である「ハンバーガー大学」の学長に就任。2003年、株式会社ファーストリテイリングの柳井社長(当時)に招かれ、ユニクロの教育責任者である「ユニクロ大学」の部長に就任。その後、株式会社バーガーキング・ジャパンの代表取締役など、外食・サービス業の代表、役員を歴任する。2012年、ホスピタリティ&グローイング・ジャパンを設立。マクドナルド、ユニクロ等を経験して得た「人財育成のノウハウ」を活かし、世界中のサービス業の発展を目指す。著書に「どんな人でも一流に育つしくみ」。

【マック&ユニクロ流人財育成】は有本均さんが人を上手に育て会社を成長させる人材育成のノウハウを伝える連載コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら

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