【生かせ!知財ビジネス】子供の創造性育成 重要な権利教育

 

 本庶佑京大特別教授らが出席した2018年のノーベル賞授与式が11日未明(日本時間)、スウェーデンのストックホルムで華やかに行われた。世界に貢献できる人材を日本から数多く輩出するためには生徒・学生段階からの創造性育成支援が鍵になる。発明や研究に関するコンテストもその一つだ。

 企業や公的機関、大学などの主催により、質の高いコンテストが行われている。注目したいのは知財の観点だ。いかに卓越した創造性があっても知財として権利化しなければ、事業化するときや研究活動を継続する際に、他の人たちから妨害される可能性がある。

 山中伸弥京大教授らが人工多能性幹細胞(iPS細胞)の基本技術特許を獲得したように、世の中に役立ちたいという志だけでは通用しない時代であることを、若いときから理解しておくことは重要だ。ちなみに特許庁の特許情報プラットフォームで調べると、本庶教授は、日本で少なくとも42件の特許を出願している。

 近く受賞者が発表される「パテントコンテスト/デザインパテントコンテスト」は、知財権を強く意識した催しだ。優秀賞には特許出願支援がつく。従って出願手続きが終了するまで、詳細な受賞内容は公表されない。この特許権を使って後に事業化し、優れた実績を出した場合、さらに特許庁長官賞などが与えられる。

 ノーベル賞授与式ではスウェーデン国王がメダルや賞状を授与するが、全日本学生児童発明くふう展の表彰式と展覧会にも発明協会総裁の常陸宮殿下が出席され、小学生レベルとは呼べない権威がある。同協会には知財制度の普及啓発の役割があり、関係団体の発明推進協会では学校における知財教育のあり方を研究中だ。

 10年ほど前に米知財投資会社CEOは、世界から天才的な子供たちを集めて議論させていたが、その際、事前に契約をして法律の専門家を同席させたという。子供のアイデアからも発明が生まれる可能性があるからで、子供たちは創造について深い意味を知ることになった。

 ノーベル賞授与式の前日「次代を担う子供たちのため、新たな時代の日本を切り開いていく」と安倍晋三首相は歯切れよく語っていた。未来のノーベル賞受賞者となる日本の子供たちのため、知財権についての教育を率先して進めてほしい。それは英語教育と同じくらい重要かもしれない。(知財情報&戦略システム 中岡浩、次回は来年1月14日掲載)

 ■生徒・学生向けの発明・研究に関係するコンテスト(名称/主催/開始年)

 全日本学生児童発明くふう展/発明協会/1931

 日本学生科学賞/読売新聞/57

 全国学芸サイエンスコンクール/旺文社/57

 自然科学観察コンクール/毎日新聞社など/60

 全国ジュニア発明展/つくば科学万博記念財団/99

 パテントコンテスト デザインパテントコンテスト/文科省、特許庁など/2002

 高校生科学技術チャレンジ/朝日新聞社など/03

 全国少年少女チャレンジ創造コンテスト/発明協会/10

 ※募集対象は各コンテストによって異なる。パテントコンテストの開始年はプレコンテスト開催年を含む