【ゴーン事件・識者に聞く】中西孝樹氏「日産は持ち株比率見直しのチャンス」

 
カルロス・ゴーン容疑者逮捕についてインタビューに応じるナカニシ自動車産業リサーの中西孝樹代表=11日午後、東京都港区(宮崎瑞穂撮影)

 --日産自動車の前会長、カルロス・ゴーン容疑者(64)が逮捕された事件は日産のクーデターか

 「内部通報から始まっており、何かを正したいという力は絶対にあった。ゴーン容疑者は今年2月に仏ルノーの最高経営責任者への再任が決まったが、仏政府はルノーと日産の資本関係を『後戻りできない形に見直す』条件を突きつけており、『経営統合の密約がなされたのでは』と、日産に動揺が走っていた」

 --日産にはルノーへの不満があった

 「日産とルノーの規模に大きな差が出たのは、日産が米国や中国という大市場を任されたからで、不公平というのは日産の見方だ。逆にルノーにはアライアンス(企業連合)が企業価値につながっていないという不満があり、日産を経営統合して全体の価値を高めるべきだとの議論は以前からあったが、ゴーン容疑者が抑えてきた。だが、ゴーン容疑者は変わった。トップを長くやり過ぎ、次のキャリアを目指した時期もあったが、良いプランがつくれず、アライアンスに君臨し続けようと権力欲に傾き始めた」

 --日産は後継会長をめぐりルノーと対立している

 「平成27年に結んだ修正アライアンス基本契約には日産の取締役選解任の決議にルノーは反対できないとある。これを覆せないのであれば、日産の独立はある程度担保されている」

 --今後のシナリオは

 「アライアンスを否定することはあり得ない。開発や調達などの機能が統合されており、解消すればコストの方が高くつく。何か契約を交わして落ち着くまで現状維持を続けることはあり得る。ただ、日産にはアライアンスの仕組みを見直す良いチャンスで、対等な持ち株比率に見直すことも可能だ。ルノーも支配できないなら日産株を売却して資金を得る選択肢もある」

 --日産への影響は

 「ブランドへの不信感が生じているので販売のモメンタム(勢い)は落ちると思う。将来計画が定まらないと投資ができないので開発計画も遅れるだろう。早期に信頼関係を取り戻してアライアンスを機能させないと、弱体化するリスクが高い」

 --西川広人社長(65)のリーダーシップで乗り切れるか

 「今は日産を守るという姿勢に対し、従業員、取引先、株主らの評価は高く、求心力は強い。ただ、彼自身が今後経営責任を追及される中でどこまで現状を維持できるか予想しづらい」

 中西孝樹氏(なかにし・たかき)米オレゴン大卒。山一証券、JPモルガン証券東京支店株式調査部長、メリルリンチ日本証券などを経て、平成25年から現職。東京都出身。57歳。