【講師のホンネ】仕事は「本質」か「方法」か? 現場で望まれる人材とは

 
鈴木一彌さん

 ブライダルのプロデュース会社を経営しながら、2016年から京都造形芸術大学芸術学科で婚礼文化の研究を行っている。婚礼文化に興味を持ったのは婚礼にまつわる事柄には全て意味があると知ったからだ。(婚礼文化研究家・鈴木一彌)

 使用する道具、手順や作法など、あらゆることに意味が存在する。

 現在は、埼玉女子短期大学と東京観光専門学校で、将来ブライダル業に進みたいと望んでいる学生に向け、仕事の本質を大切にすることの重要性を伝えている。

 先日、こんな事件があった。教え子のある学生が、某結婚式場のインターンシップに応募、指導係の先輩と一緒に接客をしていた。

 新婦の両親から「日本の結納は、何のために行うのですか?」と問われ、指導役の先輩は言葉に詰まってしまった。とっさに、同席していた学生が機転を利かせて答えた。

 「結納には、婚約に値する意味があり、古来、日本では、(1)結納式(2)挙式(3)披露宴の一連の儀式を結婚式と呼んできました」

 「近頃は省略される方もいらっしゃいますが、地域により風習も異なります。また、結納式の当日は、ご両家で挙式までの準備のご相談もできますし、婚約としても認知されますので、両家でよくご相談されることをお勧めします」

 お客さまは、「しきたりを知った上で、どのように行うかは、両家で決められるのですね」とたいそう満足されたそうだ。

 大量生産、大量消費の時代には、一定の品質を担保していれば、画一的な商品やサービスは飛ぶように売れた。一方、多様化の時代には、個別の対応がより深く求められる。

 ブライダル業界では、1996年に流行語にもなった「ジミ婚」以来、その傾向はとても顕著になっている。近年、営業現場に配属された新人を見ていると、いち早く成果を出して上司や同僚に認めてもらおうと物事の本質よりも表面的な方法論に目を奪われているように感じる。

 個別の対応を臨機応変にできるスキルの構築は、小手先の方法論の習得だけでは難しいと感じている。

 物事の本質を捉え、その理解をいかに深めて正しい知識を習得しているか。多様化された社会のニーズにそのスキルを的確にマッチできる人材こそが、現場では望まれていると感じる出来事だった。

【プロフィル】鈴木一彌

 すずき・ひとみ 東京都出身、婚礼文化研究家。婚礼業界36年。主に社会人の指導や埼玉女子短大、東京観光専門学校など15年間に1000人以上を指導。2012年、埼玉女子短大から教育功績者として表彰を受ける。16年、京都造形大で婚礼文化の新たな研究を開始。19年のNHK大河ドラマで婚礼シーンの監修を担当した。