【埼玉発 輝く】野球防具で定評、倒産後に商標引き継ぎ復活 ベルガードファクトリージャパン

 
手前に並ぶ防具、グローブが「アクセフベルガード」製品
永井和人社長
社員と製品の打ち合わせをする永井和人社長(左)=埼玉県越谷市

 埼玉県南東部に位置する人口約34万人を擁する越谷市。市内には東西にJR武蔵野線、南北に東武スカイツリーラインが走り、東京のベッドタウンとして発展してきた。休日は大型ショッピングセンター「イオンレイクタウン」に多くの親子連れが訪れる。

 この地に、日本のプロ野球選手はもとより、米大リーグの一流選手から直接注文を受ける社員4人の町工場「ベルガードファクトリージャパン」がある。捕手が装着するプロテクターや、死球から肘を守る「エルボーガード」など防具を中心に商品を取りそろえる。

 選手に迷惑かけない

 同社は2012年6月に設立。永井和人社長は「実は、この会社は長年勤めた会社が倒産して、私が商標を引き継いで始めた会社」と明かす。

 高校まで野球で鳴らした永井社長。就職も「野球に関わる仕事がしたい」と審判や捕手が身に着ける防具の製造に定評があったベルガードに入社した。

 防具製造の肝は「縫製」。「針に糸を通したこともないくらいだったので、本当にゼロからのスタートだった」と振り返る。先輩社員の技を見て盗む時代、黙々と仕事に打ち込んだという。

 その後、メキメキと頭角を現し、ヤクルトの古田敦也さんや横浜や中日で活躍した谷繁元信さんといった球界を代表する名捕手の防具を担当することに。「選手によってミットの厚さはさまざま。細かい要望に応えていくのは骨が折れましたが、自分がつくったミットを使って実際にプレーしてくれると思うと、本当にうれしかった」

 入社して約30年が経過し、製造だけでなく、企画全般も任せられていた矢先、会社が倒産した。「仕事場に弁護士さんが来て『仕事をやめて、ここから出てください』と。あまりに突然の出来事に言葉を失ったのを昨日のことのように覚えている」

 倒産した2月21日は、ちょうどキャンプの時期で、各チームから多くの注文を受けていたという。「選手に迷惑はかけられない」。永井社長はベルガードの商標を引き継ぎ、自ら新会社設立に動いた。将来的な独立を見据え、その前年から早稲田大学の起業家養成講座を受講していたのも、功を奏した。

 SNSで積極営業

 新会社を創業後、永井社長はSNSを積極的に活用した販売手法を採用。すると、大リーグの選手から直接、「こういったデザインのエルボーガードをつくってほしい」との注文メールが届く。送り主は、先日、トレードで来季からニューヨーク・メッツでプレーすることになったロビンソン・カノや、同じくメッツのヨエニス・セスペデスといった有名選手だ。

 現在、50人ほどのメジャーリーガーとメールやSNSでつながっているという。「出来上がった製品を送ると、選手自ら装着した画像付きのメールが届く。『希望していた通り! ありがとう』といったコメント付きで」。送られてきた画像を見て、つい相好を崩す。

 50歳の冬に突如として迎えたターニングポイント。「創業したときは、私1人だけ。いろいろ不安もあったが、『ここまで来たら、やってやるぞ』と自分への期待の方が大きかった」という。創業6年半が経過し、大物メジャーリーガーも認める会社となった。「これからも規模を追わず、顧客の要望に応えていくことで結果を出していきたい」と意気込む。(大楽和範)

【会社概要】ベルガードファクトリージャパン

 ▽本社=埼玉県越谷市大間野町2-194 (048・971・8646)

 ▽設立=2012年6月

 ▽資本金=800万円

 ▽従業員=4人

 ▽売上高=約1億円(18年11月期)

 ▽事業内容=野球用品の製造・販売

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 □永井和人社長

 ■技術で負けないオンリーワンの自負

 --会社を設立して6年半がたった

 「おかげさまで業績は順調。2018年11月期は前期比で約1.5倍程度売り上げが伸びた。ただ、社員4人の会社なので、生産能力に限界はある。全員、熟練した技を持った職人なので、技術的には十分に対応可能ではあるが、人手がないため注文を断ることも多い」

 --会社としての特徴は

 「一言で言えば『オンリーワン』だと思う。われわれは選手のどんなに細かい要求であっても、『何とか形にしたい』という意地で応えてきた自負がある。それが信頼につながり、選手間で口コミで広がって注文が増え続けている。大リーグと異なり、日本のプロ野球はさまざまな事情で選手の名前は出せないが、今年、日本一になったソフトバンクの一部選手も、当社の防具を愛用している。大手メーカーに規模ではかなわないが、技術で負けるつもりはない」

 --球界に一定の知名度を有したベルガードの技術やノウハウを求め、他のメーカーから触手はなかったか

 「実は、倒産直後に韓国メーカーから出資の話があった。しかし、受けてしまうとベルガードが長年築いてきた製造ノウハウが海外に流出することになる。リスクの大きさを考えて、断った。新会社に『ジャパン』を入れたのも、メード・イン・ジャパンという思いを込めたものだ」

 --今後の展開は

 「昨年の秋から取り組む製薬会社などとのコラボ商品がある。バランス感覚やパフォーマンスの向上が見込まれるといわれる物質『集積機能性ミネラル結晶体』を含んだ繊維を使ったグローブやウエア、ネックレスなどの販売を、選手だけでなく、一般にも強化していきたい」

【プロフィル】永井和人

 ながい・かずと 高校卒業後の1982年、シナガワスポーツ(翌年にベルガードに社名変更)に入社。製造と企画を担う。倒産から4カ月後の2012年6月、ベルガードファクトリージャパンを設立。57歳。東京都出身。

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 ≪イチ押し!≫

 ■グローブに「ミネラル結晶体」繊維

 今後、販売を強化する「集積機能性ミネラル結晶体」を含んだ繊維を用いたグローブやウエア。これらの商品は「アクセフベルガード」というブランド名で販売されている。プロ野球の有名投手も登板時に着用するなど、ファンは多い。

 同社のオンラインショップでは、硬式グローブが6万4800円、ウエアが7855~1万3824円、ネックレスが4850円(いずれも税込み)で販売されている。

 永井和人社長は、「プロ野球のベテラン選手から『一度身に着けると外せなくなる』という、ありがたい言葉をいただいた。これからも商品の良さを多くの人に知ってもらうため、SNSの発信を含めて知名度を上げていきたい」と話す。