教育の成功の鍵「グローイング・サイクル」 “螺旋”でステップアップ

 

 【マック&ユニクロ流人財育成】今の会社を起業した際、私は自身の経験を活かしたいと思い、ハンバーガー大学やユニクロ大学で働いていた時のことを思い返しました。

※画像はイメージです(Getty Images)

 大勢いるスタッフが行っている業務を、思い出しながら書き出していったのです。

 書き出したものを整理すると、大きく4つの分類に分けることができ、この4つの項目をぐるぐる回すことが、ハンバーガー大学やユニクロ大学で行っていた内容にかなり近いということがわかりました。

 私はこの考えを「グローイング・サイクル」と名付けました。

◆優先順位に気を付けて

 それでは早速、グローイング・サイクルの4つの分類を説明していきましょう。

(1)基準を示す

 まずはスタッフ一人一人に何をやってもらいたいかを整理します。

 部署や役職によって、求める内容は異なります。

 例えば店長であれば、売上・利益を上げてほしい、人件費を抑えてほしい、お客様の満足度を上げてほしい、リーダーシップを発揮してほしい、チームワークを良くしてほしい等々…。

 入社したての新人スタッフであれば、最初の1週間で覚えてほしい業務内容や理念等、色々出てくると思います。

 整理することにより教えるべき内容や評価項目が明確になります。

 ここで明確になった内容に優先順位をつけて、優先順位の高いものから教え・評価していきます。

 例えば、基準を示すツールの一つとしてマニュアルがあります。

経営者の想いや理念、現場でのオペレーション、研修で教えていることをマニュアルに落とし込むことで、基準を統一することができます。

◆OJTが有効だ

(2)教える

 基準を示した後は、内容を覚えてもらうための教育を行います。

教えるうえで大切なのは、全ての方に同じ内容で教える、ということです。

 たとえ、業界の経験者が中途入社したとしても、「もう知っているだろう」や「この人であればわかるだろう」という先入観は捨ててください。

 会社としての基準を示し、全員に同じ内容で教えなければなりません。

 教育の方法としては様々ありますが、OJT(On-the-Job Training)で教えることができる内容についてはOJTで実施することが良いでしょう。マックでいう、ハンバーガーやポテトの作り方などです。

 なお、OJTとは現場での実務による教育のことですが、それに対して、リーダーシップを身につけるためのノウハウやコミュニケーションのポイントなど、集合研修だからこそ学べる内容は、集合研修で実施すると学習効果が高く、身につきやすいです。

◆フィードバックが大切

(3)要求する

 これは、教えたことを現場で実践させるということです。

 教えただけでは継続をして実践する人は少ないでしょう。上司から要求し続けるということが大切です。

 研修を行っても、その効果が見られない…という企業は、この部分がうまくいっていないケースが多いのです。

 100人の店長に対しリーダーシップ研修を行い、その後1年間何もせずに過ごした場合、行動変化があり成果を出した人はほんの数パーセントになります。

 教えたことを要求することでその効果は格段にあがります。

 マックやユニクロでは現場での要求をしっかりと行なっているので、研修効果が高いのです。

(4)評価する

 グローイング・サイクルの最後のステップです。

 要求したことに対して評価を行い、フィードバックすることが大切です。

 評価の方法として、評価表の設定・チェック表の作成など様々ありますが、できるだけシンプルでわかりやすく、継続してできる内容にしましょう。

 アルバイトの場合でも評価は必要です。それは、「できている」「できていない」の2択でも構いません。

 評価を行うことによってモチベーションをあげ、成長意欲を引き出すことができます。

◆一巡したらもう一段高い基準を

 グローイング・サイクルが一巡したら、もう一段高い基準を示して再びサイクルを回していきましょう。

 グローイング・サイクルを螺旋状にぐるぐる回すことにより、人財育成の仕組みを構築することができるのです。

 最後に、グローイング・サイクルのポイントを確認していきましょう。

・各スタッフの部署や役職によってやってもらいたい項目を設定する

・優先順位の高い項目から教える

・その項目を評価に組み込む

 これらのポイントがずれていると、グローイング・サイクルはうまく回すことができません。

 もし自社での教育がうまくいかない場合は、このポイントを見直してみると解決の糸口になるかもしれません。

 次回は、評価の仕組みについてお伝えいたします。

【プロフィール】有本均(ありもと・ひとし)

株式会社ホスピタリティ&グローイング・ジャパン社長
1956年、愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部入学後、大学1年からマクドナルドでアルバイトを始め、1979年、日本マクドナルド株式会社に入社。店長、スーパーバイザー、統括マネージャーを歴任後、マクドナルドの教育責任者である「ハンバーガー大学」の学長に就任。2003年、株式会社ファーストリテイリングの柳井社長(当時)に招かれ、ユニクロの教育責任者である「ユニクロ大学」の部長に就任。その後、株式会社バーガーキング・ジャパンの代表取締役など、外食・サービス業の代表、役員を歴任する。2012年、ホスピタリティ&グローイング・ジャパンを設立。マクドナルド、ユニクロ等を経験して得た「人財育成のノウハウ」を活かし、世界中のサービス業の発展を目指す。著書に「どんな人でも一流に育つしくみ」。

【マック&ユニクロ流人財育成】は有本均さんが人を上手に育て会社を成長させる人材育成のノウハウを伝える連載コラムです。次回更新は1月15日の予定。アーカイブはこちら