IoTで農業高度化 通信業界が市場開拓に本腰
農業従事者が20年あまりで6割近くも減少するなか、情報通信各社が人工知能(AI)やあらゆるものをインターネットでつなぐIoTを活用し、農業を高度化する事業に乗り出している。NTT西日本は大阪市内の自社ビルで高品質イチゴの試験栽培を始め、KDDIも水田で水の管理などの実験を行い、最適な育成環境の再現や省力化を図る。情報通信業界が得意とするデジタル技術によって、深刻化する労働力不足解消とともに、新たなビジネスチャンスを狙う。(黒川信雄)
大阪市東成区のNTT西のビルの一室には何段もの棚が設けられ、大粒のイチゴが実る。色つやもよく甘みも十分に育っている。
NTT西は、イチゴ生産工場を手がける「いちごカンパニー」(新潟県胎内市)などと共同で試験栽培を始めた。センサーや通信技術を使い、光や水の量などを制御しながら育成データを収集。グループ会社のNTTスマイルエナジー(大阪市中央区)が解析し、効率的にイチゴを生産できる環境を作りだし、パッケージ化して植物工場の運営事業者などに売り出す考えだ。
センサーなどをインターネットにつなぐことで集中的に作動・制御できるIoTは、温度や湿度、光などの複合的な管理が必要な農業に有効とされる。
NTT西はレタス工場大手のスプレッド(京都市)とも、通信技術を使い栽培や工場運営を最適化する実験に取り組む。熊本県や滋賀県でも、トマト栽培などの実験を展開している。
稲作に着目したのがKDDIだ。兵庫県内の水田に低消費電力の水位センサーを設置し、無線通信で水田の状況を監視して見回りの回数や時間を短縮する実験を行っている。
海外で流通する果物栽培に取り組むのが、関西電力子会社のケイ・オプティコム。4月から、大阪府八尾市内で南国フルーツのフィンガーライムやパイナップルバンレイシなど、日本ではなじみのない果物の苗を屋内で育成。データを蓄積し、海外の果物を国内でも容易に栽培できるようにしたい考えだ。
農業は急速な労働人口の減少や高齢化が進む。農林水産省によると、全国の農業就業人口は平成7年は413万人だったのが29年には181万人と44%に減少。平均年齢も59・1歳から66・7歳に上昇した。栽培技術の継承だけでなく、温暖化による栽培環境の急激な変化への対応も必要で、農家だけでは限界がある。
こうした現状の克服へデジタル技術活用が期待されるが、コスト面などでの課題も多い。同分野の市場分析を手がける総合プランニング(大阪市中央区)担当者は「太陽光を利用しない屋内の植物工場の場合、通信企業が提供する高付加価値の生産技術を利用できるのは、大手に限られるのでは」と指摘する。
NTT西は「イチゴ生産はハウス栽培もコストが上がっている。新サービスの需要が増大し、電気料金などを抑えられれば導入コストは低減できる」と話す。
関連記事