【2019 成長への展望】富士フイルムHD会長・古森重隆さん(79)
■ミラーレス時代の到来で強み生かす
--海外では米中摩擦が激化し、国内では消費税率が引き上げられる
「中国の生産拠点を移す必要が高まるだろう。消費増税が景気や消費意欲にブレーキをかけるのは間違いない。社会保障費を抑えなければ、焼け石に水だ」
--出入国管理法改正についての意見は
「かつてドイツに赴任した際に実感したが、『移民』の増加は社会的コストを膨らませる。移民国家である米国以外、多くの先進国を悩ませている問題だ。人手不足をAI(人工知能)やロボットで解決することも考えないと、日本が日本でなくなってしまう」
--2019年度は中期計画の最終年度だ
「売上高2兆6000億円、営業利益2300億円の目標は確実に達成できるだろう。ヘルスケア分野が伸び、富士ゼロックスの構造改革が進んでいる」
--カメラやレンズ関連の事業が好調だ
「本格的なミラーレス時代が来た。18年3月期は売上高を30%伸ばした。(ニコン、キヤノンの2強が昨年参入したが)今後も十分に稼げるだろう。当社はレンズ、画像センサー、カラーマネジメントを手掛けている。人間は実際の色より強調して覚えるものだが、この『記憶色』を再現できるのは、フィルムを長年手掛けてきた当社の強みだ」
--インスタントカメラ「チェキ」も、販売計画を17年度比3割増の1000万台に引き上げた
「デジタルの流れの中で、アナログの新鮮味が受けている。撮ったその場で写真が出来上がり、『現実を固定化する』というインパクトも大きいだろう。写真本来の良さが見直されていることを、うれしく思う」
--ヘルスケア分野の方針は
「医薬に関しては、専業メーカーのような巨額投資でなく、身の丈に応じて伸ばす。薬の量が少なくても患部に効率よく届けるDDS(ドラッグデリバリーシステム)や、バイオ医薬の受託生産が重点分野だ。また、iPS細胞を用いる再生医療も日米2拠点体制にした。社会に価値のある製品を出す企業の使命を果たすため、歯を食いしばって先行投資を続けていく」
--米ゼロックスの買収計画が膠着(こうちゃく)状態だ
「実現すればベターだが、急ぐ必要はない。長年のパートナーであり、今後も提携関係は続いていく」
--後継者指名についての考えは
「再生医療に目鼻を付ける必要があり、米ゼロックスの問題も残っているが、その後は長期政権を担える人材に任せたい。トップがわずか4、5年で交代するようでは、何もできないからだ」
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【プロフィル】古森重隆
こもり・しげたか 東大経卒。1963年富士写真フイルム(現富士フイルムホールディングス)入社。富士フイルムヨーロッパ社長などを経て、2000年社長。12年から現職。長崎県出身。
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