電子マネー普及へ競争激化 消費税増税に伴う景気対策も後押し
金融とIT技術が融合した「フィンテック」の競争が今年は一段と激しくなりそうだ。メガバンクを中心に銀行業界で電子マネー活用の動きが本格化するほか、大手コンビニエンスストアといった流通業界にも、省人化・省力化などを狙ったキャッシュレス決済の導入が広がる。消費税増税に伴う景気対策で実施されるキャッシュレス決済へのポイント還元制度も、電子マネー普及の後押しとなりそうだ。
銀行業界では、三菱UFJ銀行などのメガバンクや地方銀行が、現金を使わないキャッシュレス決済のサービス展開に向けて連携する。スマートフォンを使って店頭で「QRコード」を読み取り、代金を銀行口座から引き落とすサービスを10月から試験的に始め、2020年4月から本格展開する計画だ。キャッシュカードで支払い、口座から即時に引き落とされる「デビットカード」の既存システムを活用。店舗側が払う手数料を1%台とクレジットカードなどと比べ低めに設定し、高い信用力を背景に普及を狙う。
さらに、みずほフィナンシャルグループ(FG)は、新たな電子マネーを今春にも発行することを検討しているほか、無料通信アプリを手掛けるLINE(ライン)と共同出資で準備会社を設立し、関係当局の許認可などを前提に20年の新銀行開業を目指す。LINEは中国の騰訊控股(テンセント)、韓国のネイバーともスマートフォンを使った決済サービスで提携し、フィンテック事業を強化する。
一方、大手コンビニではファミリーマートが7月にスマホのアプリを使った独自の電子決済サービス「ファミペイ」を全国約1万7000店で一斉に始める予定。自前の決済サービスを導入することで購買行動に関するビッグデータを得て、商品や店舗開発に生かしたい考えだ。
また、ローソンは消費税率が引き上げられる10月までに、スマホ決済「ローソンスマホペイ」の対応店舗を大幅に増やす方針のほか、最大手のセブン-イレブン・ジャパンも、8月までに独自のスマホ決済を導入する計画で、LINEや楽天などIT企業が主導していたサービスの競争が一段と激しくなりそうだ。
このほかにも、JR東日本が昨年、ICカードのSuica(スイカ)などを使った無人決済システムの実証実験を赤羽駅(東京都北区)ホームで実施した。入り口でスイカなどをかざして入店。棚から商品を取って出口付近に設置されたゲートに立つと、人や商品を店内のカメラが認識しており、自動的に合計金額がディスプレーに表示され、決済が済むと出口のゲートが開く仕組み。人手不足で閉めざるを得ない小売り店舗などがある中、人手をかけずに少ない費用で店を運営できるシステムとして需要が見込まれている。
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【用語解説】キャッシュレス決済
現金を使わず支払いを済ませることで、クレジットカードのほか、銀行口座から即時に引き落とされるデビットカード、電子マネーが主流。最近は口座やカード情報と連携させた「QRコード」をスマートフォンなどで読み取る決済方法も広がっている。経済産業省によると、2015年のキャッシュレス決済比率は韓国89%、中国60%、米国45%に対し、日本は18%。訪日外国人の消費喚起や店舗の省力化などに役立つとして、政府は普及を推進している。
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【用語解説】ポイント還元制度
中小店での買い物、飲食の際にクレジットカードや電子マネーを使って「キャッシュレス決済」をすると、代金の一定割合のポイントが付与される仕組み。政府がカード会社などに経費を出し、消費税率を10%に引き上げる10月から9カ月間実施。5%分のポイント全てを他の買い物に充てれば負担が浮き、消費税率が10%から5%に下がるのと同じ効果が出る。8%の軽減税率が適用される飲食料品も対象となるが、一部の高額品や金券は除外する方針。
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