自動運転、世界で覇権争い激化 異業種含め提携加速 政府主導の中国脅威
自動車業界は技術革新が進み「100年に1度」とされる大変革期を迎えている。その革新の大波の中でも、特に重要な次世代技術と位置付けられているのが自動運転だ。事故の減少や公共交通機関に乏しい過疎地での活用など社会課題の解決に役立つと期待されているためで、調査会社の富士キメラ総研は2040年には自動車の世界販売台数の3割超を自動運転車が占めると予測する。自動運転の開発をめぐっては国内外で異業種を含めた提携が加速、中国が技術の高度化に向けたデータ収集で特異な存在感を示すなど覇権争いが激しくなっている。
独自の運転支援システム「アイサイト」に定評があるSUBARU(スバル)は、30年に自社車両が関わる死亡事故ゼロを目指す。この技術を進化させ、20年をめどに高速道路上での自動車線変更を、24年に無人での自動駐車を可能にしたい考えだ。
レベル3以上33%へ
富士キメラ総研によると、40年の世界自動車販売は、自動運転の技術区分で「レベル3」以上の車が4412万台となり、全体の33.0%を占めるという。メーカー各社の開発の進展を背景に20年予想の18万台、0.2%から大きく伸びると予測した。
「レベル3」は、車のシステムが一定の条件下で運転を代行する。40年時点で4412万台の90%以上を占め、この時点では、走行する場所などを問わない完全自動運転の「レベル5」車はまだ限定的。自動運転車の普及は欧州が牽引(けんいん)し、官民が新技術の導入に積極的な中国でも、早期に市場が拡大すると分析する。
実際、欧州大手メーカーのアウディの日本法人が昨年10月に発売した旗艦車「A8」の新型には、レーザースキャナーなど「レベル3」を見据えた先進技術を搭載する。複数の操作を自動化する「レベル2」の車として販売しているが、法整備などに伴い、すぐにレベル3に移行できるよう準備を進めている。
異業種融合で注目されるトヨタ自動車と携帯電話大手ソフトバンクは23年以降、次世代の自動運転車を使った移動サービスに乗り出す。商品を住宅地まで自動で運ぶ「移動コンビニ」などを想定。ホンダは米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)と自動運転分野でも協業を進める。
日本自動車工業会(自工会)は20年の東京五輪・パラリンピックの開催直前に、羽田空港や東京の都心部での自動運転を実験する方針だ。
業界内では、事故が起こった場合の責任に関して「議論が深まっていない」との声が出ている。これが研究開発の足かせとなる恐れもある。自工会の豊田章男会長(トヨタ自動車社長)は自動運転の実用化に向け「ものすごく現実と法律のギャップがある」と指摘しており、法整備では安全が重要との考えだ。
日米欧の戦略に影響
一方、自動運転などの先端技術開発で世界トップを目指す中国では、習近平政権が社会の安定維持を理由に、AI(人工知能)やビッグデータを使った個人認証などの先端技術を活用した監視網を整備しており、これを使って収集した膨大な情報を電気自動車(EV)をはじめとする次世代車の開発に活用する動きをみせている。AP通信によると、中国政府は内外の自動車メーカーに、中国国内を走るEVの位置情報などリアルタイムデータの提供を求め、日産自動車や米テスラ、GM、フォルクスワーゲン(VW)など200社以上が要求に応じ提供しているという。
先端技術を後押しする中国政府は、企業ごとに取り組むべきAIの開発分野を指定。検索大手の百度(バイドゥ)は自動運転、アリババは都市機能、テンセントは医療と役割分担して戦略的に集中投資しているとされる。米IT大手「GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)」の向こうを張って「BAT」と並び称されているこの3社の動きは、日米欧の大手自動車メーカーの戦略に大きな影響を与えそうだ。
関連記事