メーカーの「IoT家電」投入本格化 AI駆使して時代はスマート家電からスマートホームへ

 
パナソニックの次世代住宅「カサートアーバン」に設置された小型パネル=東京都世田谷区

 パナソニック、シャープといった家電メーカーが、あらゆるモノがネットにつながる「IoT家電」の投入を本格化させている。インターネットに接続するだけでなく、連携する人工知能(AI)が、利用者一人一人の生活を学習して暮らしを助けるよう高機能化が進められている。異なるメーカー同士の機器連携も進む。ただ、現状では通信機能のない家電を使っている人が多く、機能がある家電を持っていても使用していない人は多い。普及に向けて通信機能を使う気になってもらうための工夫も必要だ。(織田淳嗣)

 省エネから暮らし向上へ

 東日本大震災後の省エネ需要の高まりで、家電に先行して、住宅設備へのネット接続機能が浸透していった。住宅メーカーは自家発電などですべてをまかなう「ゼロエネルギー住宅」(ZEH=ゼッチ)を実現する手段として、家庭向けエネルギー管理システム(HEMS=ヘムス)の販売を本格化。太陽光パネル、蓄電池などさまざまな機器が接続して効率的な運用を行い、エネルギーを管理して電気代を減らす。

 ただ近年の情報技術の発達で、通信機能付きの家電が拡大。ネット接続機能は単に省エネだけでなく、暮らしの利便性向上が強調されるようになった。

 他社との連携進む

 代表的な試みとして注目されているのが、パナソニックが昨年10月に発表した新サービス「ホームX」だ。

 炊飯器、給湯器、ドアのシャッター、電子錠などの家電、住宅設備を無線接続し、専用のディスプレー上で操作できる。人工知能が、家電の使用履歴をもとに利用者の好みの音楽を流して起床の手助けをしたり、気候に合わせた好みの料理を提案したりするなど、使うほどに新しい機能が追加されるのが特徴だ。パナソニックはホームXを導入した次世代住宅「カサート アーバン」を昨年11月に発売している。

 ホームXの開発の前身は、パナソニックエコソリューションズ社が平成24年に発売した、住宅設備機器をネットにつないで連携させる家庭向けのエネルギー管理システムのサービス「アイセグ」だ。今年度までにシリーズで累計13万台を売り上げている。すでにシャープやダイキン工業のエアコンなど、他社商品との連携も実施。昨年10月にバージョンアップした「アイセグ2」は、従来の13社26機器から20社33機器に広げた。

 広報担当者は「暮らしに寄り添ったサービスのため、当社だけでなく他社との連携を進めたい」と話す。今後、ホームXもアイセグ2と連携させてサービスを拡大する。

 「部屋」を乗せて全国行脚

 シャープはつながる家電の“行商”で認知を広げる。家電9種類がそれぞれ連携している「部屋」を載せた体験用の「キャラバントラック」を運行。今年3月まで全国の量販店などを巡回する。

 テレビのリモコンを通話機として活用でき、リモコンに「寒いよ」と言えば、エアコンが作動する。人工知能と連携しており、繰り返し使うことで、利用者の好みの室温、湿度を把握して先取りして作動するようにもなる。シャープは来年度末には家電全体の半数をこうした「AIoT(人工知能とネット接続を組み合わせた造語)機器」化する計画だ。

 シャープの調査では、AIoT機器を買った顧客のうち実際に家電を通信接続している割合は、業界の平均の2割と比べると高いものの、現状では4割程度。2020年度末には7割まで高める計画を立てる。キャラバントラックは認知向上の重要な役割を担う。

 また、現時点で、シャープが構築した連携システムは他社家電とはつながっていない。シャープでスマートホーム事業を統括する長谷川祥典・専務執行役員は「パナソニックは『家』という切り口でサービスを行い、われわれは家電からのスタート。登り口が違う」とした上で、他社家電との接続は「今後の大きな課題。スマートホームはわれわれだけでは実現できない」と他社との連携を進める考えを示している。

 ■IoT家電 IoTは英語の「Internet of Things(インターネット・オブ・シングス)」のことで「モノのインターネット」と訳す。センサーで取得した利用者の声や気温など、あらゆる情報をクラウド上の人工知能(AI)が処理し、効率的に動作させる仕組み。スマートフォンやタブレットと連携して、端末をリモコン代わりに操作でき、運転状況などのデータ閲覧もできる。「スマート家電」とも呼ばれる。