平成の企業倒産史、昭和の3倍ペース あの巨大航空やメガ流通も…金融危機でラッシュ

 
民事再生法の適用を申請し、記者会見するタカタの高田重久会長兼社長(当時)=2017年6月26日、東京都千代田区

 「平成」30年間の上場企業の倒産は200件を超え、負債は22兆円に達した。昭和の3倍のペースで毎年発生し、バブル崩壊後に先送りされた不良債権処理、金融危機、リーマン・ショックなど国内外の事態に翻弄された。(東京商工リサーチ特別レポート)

◆バブル崩壊から雲行き暗転

 1989年1月からの平成30年間の上場企業の倒産は、累計233件(負債合計21兆9087億500万円)だった。バブル真っ只中の1989年、90年は上場企業の倒産はなく、平成初の上場企業倒産は1991年(平成3年)8月に会社更生法を申請したリースマンション分譲のマルコー(負債2777億4000万円、店頭上場)だった。

 ゼロ件でスタートした平成の上場企業倒産だったが、小泉内閣による金融機関の不良債権処理が打ち出された2002-03年は48件発生、第1次ピークを迎えた。そして、リーマン・ショックで世界同時不況に陥った2008-09年は53件が発生、第2次ピークとなった。

 その後、緩やかな景気回復を背景に上場企業の業績は急速に持ち直し、2010年の10件を最後に、2011年から2桁を割り込んだ。なかでも2013年以降は、2014年と2016年のゼロ件を含め6年連続で3件以内で推移している。

 上場企業の年間(1-12月)倒産の最多は、リーマン・ショックがあった2008年(平成20年)の33件。次いで、不良債権処理が進んだ2002年(平成14年)の29件、リーマン・ショック翌年の2009年(平成21年)の20件、イラク戦争開戦の2003年(平成15年)の19件の順だった。

◆マイカルの負債は1兆6000億円

 平成の30年間で負債額の最大は、2001年(平成13年)9月に民事再生法を申請した(後に会社更生法に移行)総合スーパーのマイカル(東証・大証1部など5市場)で、負債は1兆6000億円だった。

 次いで、2017年(平成29年)6月の自動車部品製造のタカタ(負債1兆5024億円、民事再生法、東証1部)、1996年(平成8年)10月の住宅ローン保証の日榮ファイナンス(同1兆円、商法整理、東証2部)、2000年(平成12年)5月の信販・クレジットカード業のライフ(同9663億円、会社更生法、東証・大証1部)、同年7月の百貨店のそごう(同6891億円、民事再生法、東証1部)と続く。

 一方、負債額が最も小さかったのは、2005年(平成17年)7月のメモリーカード機器製造の日本エルエスアイカード(負債4800万円、取引停止処分、大証2部)だった。

◆東証1部に次いでジャスダックが目立つ

 産業別では、最多が戦後最大の製造業倒産となったタカタを含む製造業の66件だった。次いで、建設業39件、不動産業33件、金融・保険業25件、サービス業他21件、小売業18件、卸売業16件、情報通信業9件、運輸業5件、農・林・漁・鉱業1件の順。

 バブル崩壊後に先送りされた不良債権処理を要因とする建設業と不動産業、これに関連したノンバンクを含め、1997-98年の金融危機を経て整理が進んだ金融・保険業などが上位を占めた。

 資本金の最大は、2010年(平成22年)1月の日本航空(資本金2510億円、会社更生法、東証1部)。従業員数の最多は、マイカル(従業員数5000人)だった。

 市場別では、東証1部が81件で最多、次いで、ジャスダックが46件、東証2部が31件、店頭上場が22件、大証2部が21件と続く。東証1部が突出し、次いで新興企業を多く抱えるジャスダックの多さが目を引く。

◆未曽有の不況が日本経済を襲った

 平成の30年間の上場企業倒産は、年平均で7.7件発生した。東京商工リサーチが全国倒産集計を開始した1952年(昭和27年)から1988年(昭和63年)までの「昭和」の37年間の上場企業倒産は合計95件で、年平均2.5件にとどまる。上場企業数が異なり単純比較はできないが、平成は昭和の3倍のペースで上場企業倒産が発生した。

 平成の30年間を10年ごとに区切って比較すると、(1)1989年(平成1年)~1998年(平成10年)は44件(年平均4.4件)だったが、(2)1999年(平成11年)~2008年(平成20年)は140件(年平均14件)と急増した。

 この期間は、金融機関の破綻が相次いだ金融危機直後からリーマン・ショックが起こった時期で、不良債権の早期処理と未曽有の不況が相まって上場企業倒産が頻発した。

 その後、(3)2009年(平成21年)~2018年(平成30年)は49件(年平均4.9件)と大幅に減少した。2018年の上場企業の倒産は、6月に会社更生法を申請した海洋掘削事業の日本海洋掘削(負債904億7300万円、東証1部)の1件(前年2件)にとどまった。

 この背景には、金融機関の不良債権処理が峠を越え、資金調達環境の改善、円安誘導で輸出企業を中心にした上場企業の業績回復、戦後最長を視野に入れた景気拡大などがあり、沈静化を後押しした。

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