【道標】社会に影響及ぼす「GAFA」 消費者の安全確保へ一定の責任を

 
林秀弥・名古屋大教授

 米巨大IT企業のグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンは頭文字を取って「GAFA」と称される。この4社をはじめ、デジタル分野のプラットフォーマー(PF)と呼ばれる事業者が近年、製造業などのリアルな分野にも事業領域を拡大するとともに、イノベーションを牽引(けんいん)している。

 その一方で、こうしたデジタルPFをめぐっては、取引条件の透明性や公正性、データの独占的保有、個人情報の漏洩(ろうえい)などの問題点が、わが国を含め世界的に指摘されている。しかし、各国・地域の競争当局の間でも、PFに対する適切な規制の在り方について、十分な合意は得られていない。

 日本政府は昨年、GAFAに代表されるPFへの対応策を有識者会議で検討し、12月12日に中間論点整理をまとめた上で、同18日、PFに関する公正性確保のための透明性実現を目指す「基本原則」を策定した。

 ごく簡単にまとめれば、GAFAについて厳格な規制を志向するのが欧州、やや厳格化の傾向にあるのが日本、受容的な規制スタンスを維持しているのが米国といえよう。

 米ハーバード大のローレンス・レッシグ教授は、インターネットのガバナンス(統治)の4要素として(1)法(2)アーキテクチャー/コード(技術を支えるシステムとその運営準則)(3)市場(4)規範-を挙げている。

 まさに昨今のGAFA規制をめぐる議論では、デジタル技術のアーキテクチャーが急速に発展・変化し、社会の在り方にまで広く影響を及ぼしており、巨大PFが自ら約款や利用規約、プライバシーポリシーといった形でコードを策定している状況にある。

 そのような中、新技術に法が追い付いておらず、法を執行する能力や仕組みが不足する(例えば、規制当局がデジタル市場を十分に監視できていない)など、法とアーキテクチャー/コードとの間にギャップが発生している。

 今回の基本原則は、このような現状を意識したものである。欧州連合(EU)が昨年4月、PFの公正性・透明性の促進に関する規則案を公表し、オンラインプラットフォーム経済監視委員会を設立して、EU競争法・消費者法の執行を補完し、社会基盤としてのPFのコードの分析を行うと表明したが、日本の基本原則はその流れに沿ったものでもある。

 基本原則は、巨大PFの運営・管理の透明化を図る必要性について一石を投じたものだが、今後、インターネットガバナンスに関するあるべき規範に立ち返りつつ、PFに関する公正かつ自由な競争とはどうあるべきか、再定義・再構築していく必要があろう。

 これまでわが国では、PF上で違法な取引・行為が行われた場合であっても、PFは単なる「場の提供者」であるから積極的な責任は負わないと解する向きが強かった。しかしながら、市場のゲートキーパーとしての機能も有するPFに一定の役割・責任を担ってもらうことが、ユーザーの保護や消費者の安全確保などを図る上で効果的であると思われる。

 またPFにとっても、取引の安全・安心を確保することが、取引相手や消費者からの信頼を集めることにつながり、ひいては自らの健全な発展を促すことにもつながるだろう。

【プロフィル】林秀弥

 はやし・しゅうや 名古屋大教授。1975年兵庫県生まれ。京都大博士。神戸市外国語大専任講師などを経て現職。専門は独占禁止法、情報法。共著に「情報法概説」など。