くしに自動車加工技術、25万本を出荷 「自然な美髪」実現、夢は世界へ
ぱさつきや静電気といった頭髪の悩みを抱える女性は多い。整髪料やシャンプーを使ったさまざまなケアの方法があるが、基本は、くしですくことだ。YC.Primarily(ワイシー・プライマリー)は、最新の自動車加工技術を活用して製造した、くしを販売している。髪の持つハリとツヤをよみがえらせ、2011年の発売以来、シリーズ累計で25万本を出荷した。下島千穂社長は「5年以内に累計100万本を達成する」と強調、さらに販売を加速する。
地肌に優しく滑らか
同社が製造・販売する、くし「ラブクロム」は、自動車製造で用いられる特殊な表面加工技術を応用している。くしの歯の先端は球状で地肌に優しく、滑らかに髪をすくことができる。表面摩擦を大幅に軽減し、微細な空洞をふさぐことで汚れがつきにくく衛生面でも効果を発揮する。
髪をすいたときに避雷針のように静電気を吸着して拡散させる働きがある。このため髪の広がりを抑え、急な放電による枝毛の発生を防ぐ。また、自分の頭皮の油を髪に浸透させることで、自然な美髪を実現させる。
利用者からは「髪に優しく使いやすい」「ダメージヘアでも引っかからず、滑らか」「静電気で毛先がパサッとなっていたのが、スルッとまとまる」といった声が寄せられている。
ラブクロムは、もともと美容師向けに開発した。高機能で好評だったため、一般向け商品を開発し、美容室で店頭販売を始めた。その後、40~60代の女性を中心に口コミで評判が広がっていき、今では百貨店やテレビ通販でも購入できる。楽天、アマゾンではランキング1位にもなった。
下島社長は北海道の高校を卒業後、バレーボール実業団のNECに所属。選手、マネジャーとして活躍した。その後、アパレル会社勤務を経て、ヘルスケアに関心があったことから美容サロン立ち上げに携わる。
頭髪に悩むようになるのは出産前後からで、髪の毛が細くなり、傷みやすくなった。美容師から「髪の毛をすくことが大事」とアドバイスされ、いろいろなブラシや、くしで試してみたが、効果がみられなかった。このため「自分で作るしかない」と思い、開発に着手する。
自動車加工技術に注目したのは、夫の実家が自動車部品加工業の塚田理研工業(長野県駒ケ根市)だったことが、きっかけとなった。同社の被膜加工や3次元(3D)加工などは、国産高級車やスポーツカーにも採用されている世界レベルの優れた技術だ。塚田理研工業がリーマン・ショック後に自動車関連以外の新規事業を模索していたこともあり、最新技術を活用した高機能のくしを完成させた。
海外展開も強化
海外市場への展開も進めており、イタリア・ボローニャで開催される国際美容見本市に出展。イタリアのほか、英国、フランス、ロシアのバイヤーも関心を示し、購入した。
「細くウエーブがかかった外国人の毛質に合った新商品の海外販売を19年中に実現する」と、輸出用のくしの開発に着手している。
ブラシではなく、くしにこだわる。「ブラシは髪についた汚れや、ごみを取る道具として発展を遂げた。一方、くしは日本古来の美髪のための道具であるとともに、ジュエリーに代わる装飾品として親しまれてきた」。夢は、日本の伝統美と最新技術で、世界中の女性の髪をすくことだ。
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【プロフィル】下島千穂
しもじま・ちほ 旭川実業高卒。VリーグNECレッドロケッツに入団、選手、マネジャー。アパレル会社勤務を経て、美容サロン立ち上げに携わる。2007年10月、YC.Primarilyを設立し、現職。43歳。北海道出身。
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【会社概要】ワイシー・プライマリー
▽本社=東京都渋谷区神宮前4-14-18 J-FLAT
▽設立=2007年10月
▽資本金=550万円
▽従業員=10人
▽事業内容=美容商材の製造販売、サロン運営
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