幹部、若手がブランド議論 「マツダ塾」で人材育成へ

 
議論するマツダ社員=2018年9月、広島県府中町

 マツダが社員同士の対話を軸にした独自の人材育成方法「マツダ塾」に力を入れている。幹部から若手まで集まり、ブランド価値などの大きなテーマを1年間かけて議論する。技術革新により自動車業界が激変する中、独自性や存在意義を重視し、事業戦略にも生かす狙いだ。

 昨年秋、広島県府中町にあるマツダ本社の一室。集まった若手社員の中で1人が「2040年の人の欲求とは何だろう」と切り出すと議論が始まった。

 「本質的な欲求はそもそも変わるのだろうか」「ものへの愛着や共感は薄れるのかな」。人工知能(AI)の進化にも話題が広がり、議論は1時間近く続いた。見守っていた米国生産準備室の越智和彦さんは「車は他のものにはない感情を与えてくれるのか」と問題提起し、次回の議題にすることを提案した。

 マツダ塾は16年から始まった。10人程度の塾が複数あり、執行役員や本部長級が塾長、30代半ばから40歳未満の選抜された社員が塾生となる。活動期間は1年間。その間に、塾生はさらに若い世代と「子塾」をつくり対話を重ねる。

 昨年末までにマツダ塾と子塾に計約400人の社員が参加した。越智さんは塾生として活動し子塾の仕切り役も務め「若手と自分に気づきを与えられるよう心掛けた」と語る。

 自動車業界は自動運転など次世代技術をめぐる開発競争が激化している。マツダは国内大手の一角だが、世界市場に占める販売台数の割合は2%程度にすぎない。

 人事を担う吉田和久執行役員は「スモールプレーヤーとして生きるには、存在意義を明確にし、社員が理解する必要がある。変革期を乗り切る最後の力は人材」と語る。

 社員の知見を深める取り組みは他社でも盛んだ。ヤマハ発動機も管理職を対象に自社のブランド価値を議論する研修を導入した。「ヤマハらしさ」とは何かを考える機会としており、管理職以外の社員にも拡大することを検討している。

 スズキは次世代技術に関し専門家を招いて講演会を開くなど、知見の吸収に力を入れている。