【2019 成長への展望】MRJの量産化に向けた統合を検討 三菱重工業・宮永俊一社長
--国産初のジェット旅客機「三菱リージョナルジェット(MRJ)」の初納入がいよいよ来年に迫った
「昨年は英国の航空見本市で展示飛行を初披露し、増資で(開発子会社)三菱航空機の債務超過も解消できたポジティブな一年だった。当社は米ボーイングの部品製造を請け負っているが、二元管理は無駄があるため、MRJの量産化へ向け統合を検討している」
--4月で社長就任から丸6年を迎える
「成熟したコングロマリット(複合企業)は保守的・安定的経営に陥りがちだが、構造改革を懸命に進めてきた。工場や製品の数も減らしたし、成長のための改革が終わってグローバル経営に移ろうとしている。後継者像は考えているが、まだまとまっていない」
--国内防衛産業の発展に向けた課題をどうみる
「緊急事態に対応できる国内企業群の存続は非常に大事だ。『基礎体力』である中小企業が生きていくためには組合のようにまとまる道もあるが、国の配慮をお願いしたい。一方、先端技術を民間転用できる当社は生きる道を自分たちで探し、技術を磨いていく」
--いわゆる徴用工問題が事業に及ぼす影響は
「当社の韓国向けビジネスは、昔ほど大きくない。MHPS(三菱日立パワーシステムズ)がガスタービンを売っているくらいで、深刻な影響はない。また資本財の場合は消費財と異なり、たとえ感情的な問題が存在してもビジネスの論理がしっかりはたらくものだ」
--費用が高騰しているトルコ原発計画への対応は
「経済合理性の範囲内で対応するが、私どもが『やめる』と判断できることではない。政府間の協定に基づいて事業化調査の結果を提出しているので、先方から何らかの反応があるものと考えている」
--原発新設は難しい。人材や技術をどう維持する
「仏社との合弁事業である新型中型炉『アトメア1』の開発を通じ、若手をトレーニングしている。また、当社が手掛けるPWR(加圧水型軽水炉)系の電力会社に対して新設の検討もお願いしている。技術者を途切れずに養成し、(中露などに対抗できるよう)安全性とコスト競争力、技術力を高めていく」
--火力発電への逆風も強まっている
「MHPSのシナジー効果により2020年度までは仕事量を確保できているが、それ以降は抜本的な対策が必要だ。軌道に乗ってきた洋上風力発電に引き続き注力するとともに、発電量が上下する再生可能エネルギーと、それを補う発電用ガスタービンを組み合わせ、分散型エネルギーのビジネスを育てたい。過剰となる生産設備は、他事業へ展開することになるだろう」
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【プロフィル】宮永俊一
みやなが・しゅんいち 東大法卒。1972年三菱重工業入社。執行役員、常務執行役員、副社長執行役員などを経て2013年4月から現職。福岡県出身。
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