リアル「まんぷく」知りたい! 日清食品創業者夫妻の展示が人気

 
仲むつまじい姿がうかがえる安藤夫妻=昭和30年頃(日清食品ホールディングス提供)

 チキンラーメンなどの即席麺を開発した大阪発祥の日清食品創業者、故・安藤百福(ももふく)さんと妻の仁子(まさこ)さんをモデルにしたNHK連続テレビ小説「まんぷく」の放映を機に、日清食品や大阪商工会議所が安藤夫妻のゆかりの資料などを紹介した展示イベントを開き、人気を集めている。ドラマも、ようやくラーメン開発の段階に近づき、安藤夫妻の実像を深く知りたいと望む人たちは今後さらに増えそうだ。(田村慶子)

 日清が大阪府池田市と横浜市で運営する「カップヌードルミュージアム」では3月末まで特別企画展「チキンラーメンの女房 安藤仁子展」を開催し、休日を中心に多くの人でにぎわう。百福さんを支えた仁子さんに脚光を当て、生前のインタビュー映像や写真、手帳などを展示。ドラマでは仁子さんをモデルにした福子が働くホテルで夫となる立花萬平と運命的な出会いを果たす場面が描かれたが、企画展でも仁子さんが電話交換手の資格と得意の英語を生かして京都市内のホテルに就職し、百福さんとの結婚につながったエピソードが紹介されている。

 「展示とドラマをつい重ねて見てしまう。これからドラマの展開が楽しみですね」。池田市のミュージアムでの企画展に訪れた滋賀県東近江市の50代男性は、連れの女性と顔を見合わせながら笑顔で話した。

 ドラマは特に日清の創業地の関西で関心を集めているようだ。池田市のミュージアムでは、放送が始まった昨年10~11月の来場者数が前年同期比13%増。特に11月は行楽シーズンも重なり前年同月比21%増と、平成28、29年11月の同6%増よりも大きく増加率を高めた。日清食品ホールディングスの大口真永(まさなが)広報部長は「おかげで休日は、かなりの混雑。ドラマをきっかけに来場者が増えるのはありがたい」と話す。

 大阪商工会議所が運営する大阪企業家ミュージアム(大阪市中央区)も、百福さんに焦点を当てた特別展示を2月20日まで開催。百福さんが社員に向けて発信した年頭所感の色紙の複製や、事業のアイデアなどをすぐに記せるよう枕元に置いたメモ帳と鉛筆の実物などが注目を集めている。

 同館は普段、研修・研究目的で訪れる企業関係者や大学生の団体客が多いが、「1人か2人連れの個人客や女性グループなど客層が広がっている」(大阪商工会議所)という。過去にもドラマの放送時にモデルとなった企業家の特別展示を行ったところ、爆発的に来場者が増えた実績があり、押し上げ効果に期待する。

 また、日清食品が編集に携わった書籍「チキンラーメンの女房 実録 安藤仁子」(中央公論新社)も、昨年9月発売当初の1万6千部から5刷まで重版。12月時点で発行部数は3万部と急激に伸びている。

 関西を中心とした安藤夫妻に対する関心の高まりについて、大阪市立大学大学院経営学研究科の吉村典久教授は「暮らしに身近な商品を作る関西発の企業が少なくなった中、金もうけが先ではなく、世の中に役立ち、自らわくわくできる事業に人生をかけた百福さんのような経営者を待ち望む人が多いのではないか」と指摘。また、仁子さんの魅力については「英語も堪能で当時としては高い教育を受けた知的な女性。百福さんの事業の価値を知る一番の理解者だったに違いなく、夫を立てる古風な面もあった」とみている。

 ドラマもラーメン開発の段階に近づいており、展示来場者の更なる増加だけでなく、安藤夫妻の努力の結晶であるチキンラーメンなどを改めて味わおうと日清食品の商品購入促進につながる波及効果なども期待される。

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 ■日清食品 安藤百福さんが昭和23(1948)年、魚介類の加工・販売、繊維業などを目的に中交総社を設立し、本店を大阪府泉大津市に置いた。24年、サンシー殖産に商号変更し、本店を大阪市に移転。33年、瞬間油熱乾燥法の即席袋麺「チキンラーメン」を開発し、日清食品に商号変更。46年には「カップヌードル」を発売し、52年に現在の同市淀川区に本店を移した。平成20年に持ち株会社制に移行し、日清食品ホールディングスに商号変更した。

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