KDDI、IoT活用で1次産業支援 IT会社と資本提携、消費者と生産現場つなげる

 
エコモット株式会社ホームページより

 KDDI(au)は15日、農業や水産業など1次産業向けのシステム開発などで実績のある札幌市のIT会社「エコモット」と資本提携し、持ち分法適用会社とすると発表した。最先端技術を駆使した生産性向上や人材育成のほか、データを通して消費者と生産現場がつながることで、1次産業の活性化への期待も高まる。

 KDDIは31日までに議決権比率で21.1%に当たる株式を取得し、グループ会社化する。取得額は十数億円規模とみられる。

 エコモットはセンサーなど、データの収集技術に強みを持ち、農業や酪農分野での温度管理システム開発などで実績がある。KDDIは自社のネットワークを利用し、サービスの企画から機器の保守までを一体で運用。従来の10倍以上の通信速度となる第5世代(5G)移動通信方式に対応した機器を共同開発し、1次産業でのモノのインターネット(IoT)導入を加速させる狙いがある。

 IoTは人手不足に悩む地方での普及が急務だ。NTTドコモは今年度中にも、岩手大学と共同で水産業や畜産業などの実証実験を開始する。盛岡市のキャンパスから約100キロ離れた岩手県釜石市のサクラマスの陸上養殖設備を遠隔管理する。画像データなどを人工知能(AI)で解析し、餌を管理したり、異常を検知したりできる。

 経験と勘に頼っていた1次産業のノウハウが数値化され、経験の浅い若手人材の育成にもつながる。

 IoTの活用で、生産者と消費者の関係も大きく変わりそうだ。楽天は17年、ゲームと実際の生産現場を連動させた農業サービス「Ragri(ラグリ)」を開始した。消費者は欲しい農作物を選び、パソコンやスマートフォン上で、仮想の農園を管理する。適切に栽培すれば、送られる野菜や果物の量が増える仕組みだ。実際にイノシシが畑を荒らすとゲームでも鳥獣被害が発生するなど、現実の一部とゲームが連動している。

 消費者は直接生産者と交流でき、農家支援サービスとしても注目される。生産者は発注に応じた生産で収益の安定化も見込める利点があり、契約農家数は前年同期に比べ3割増の約180人になっている。