【2019 成長への展望】リスクに見合う保険料率水準を確保 東京海上ホールディングス・永野毅社長
--自然災害が多発し、大手損害保険3グループの2018年度の保険金支払額が1兆円を超える見通しだ
「統計上30年に1回は、この規模の災害があると想定しており、リスクのコントロールはできている。だが、今後も同じレベルで起こるとなると、持続的な経営に影響を及ぼす。統計に頼る考え方を少し切り替え、もっと先行きのトレンドの変化に注視しなければならない。リスクに見合う適正な保険料率水準を確保する必要性がどうしても出てくると思う」
--火災保険の保険料算出の目安になる「参考純率」が昨年6月に平均5.5%引き上げられた
「秋頃に5.5%プラスアルファの値上げを要請することになると思う。5.5%は過去のトレンドで決められ、昨年の災害の分は盛り込まれていない。リスクに対して、取り足りていない部分をどれだけみるかだ。ちょうど消費税増税の時期とも重なる。保険料は非課税だが、一方で経費は圧迫されるので、増税の影響なども総合的に判断して決めることになる」
--リスク分散に向け、海外事業を一段と拡大する
「海外は欧米中心だが、地域的にはアジアを中心とする新興国事業を拡大する。重点国はタイ、マレーシア、インドネシア、フィリピン、インドなどだ。既存拠点での内部成長に加えて、400億~500億円規模のM&A(企業の合併・買収)を繰り返していきたい。M&Aは数千億円規模までいつでもできる準備はできているが、案件次第だ」
--自動運転技術の進歩やカーシェアリングの台頭などで、損保会社の収入保険料の約6割を占める自動車保険の在り方は大きく変わるのか
「長いトレンドの中では間違いなく変わっていくと思う。ただ、国内には8100万台もの自動車保有台数があり、それが一気に変わるのではなく、少しずつ変化していく。その過程ではさまざまな車が混在し、リスクは複雑になってくるので、保険の要請というのはますます強くなる。変化に応じて保険の中身は変えていくが、変化をしっかりと追っていけば、コンスタントな成長をこれからもできる可能性は十分ある」
--金融事業に相次ぎ参入しているITプラットフォーマーにどう向き合うか
「できるだけ広く世の中に顧客に保険を届けることをベースに、どことでも柔軟に組んでプラットフォーマーが抱えているマーケットに一緒になって、われわれの商品やサービスを届けたいと考えている。あるときにはライバルになるかもしれないが、そこは是々非々で基本的には提携していく」
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【プロフィル】永野毅
ながの・つよし 慶大商卒。1975年東京海上火災保険(現東京海上日動火災保険)入社。東京海上日動火災保険社長などを経て2013年から現職。高知県出身。
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