日本企業、合意なき離脱に警戒感 英国のEU離脱案否決、動向次第で企業活動鈍化
英国が欧州連合(EU)から「合意なき離脱」をする懸念が強まり、現地に拠点を置く日本企業は身構えている。先行きの不透明感により、企業活動が鈍化すれば、英国経済を下振れさせるリスクが高まりそうだ。
ホンダは、英南部のスウィンドン工場の稼働を4月に6日間休止することを検討。英・EU間の貿易で関税を払う必要が生じ、通関手続きで物流が混乱したときに、対処するためだ。トヨタ自動車のバーナストン工場(英中部)も、稼働が一時停止する懸念がある。通常は「トヨタ生産方式」により4時間製造する分しか部品の在庫を抱えておらず、警戒感を強めている。
日産自動車はスポーツ用多目的車(SUV)などを年約50万台生産しているサンダーランド工場(英北東部)で働く従業員の賃金改定交渉を昨秋から今年に先送りする方針を労使間で決めた。合意なき離脱となった場合、生産台数やコストが大きく変更を迫られる可能性があり、収益予想が立てにくいからだ。生産・販売面への影響を見極めた上で賃金交渉に臨む方針だ。
欧州で自動車部品を手掛ける大手国際物流会社の担当者は「部品の在庫確保が求められそうで、倉庫の手当てに取りかからなくてはならない」と話す。
英中部に鉄道車両工場を持つ日立製作所は「ハードブレグジット(合意なき離脱強行)を視野に入れて調査・検討を続けていく」と説明する。同工場は英国内向けの車両製造を担ってきたが、離脱後は国外から購入する部品に関税がかかるため、代替調達先を検討している。
「通勤客が想定より伸びていない」。三井物産は、参画する英国の鉄道事業の乗客見通しに影響が出ていることを受け、事業計画を見直しているという。EU離脱への警戒感が、英国内の経済や雇用に波及したためとみられる。NTTの澤田純社長も「欧州全体への投資が鈍るなどの間接的な影響には警戒したい」と語る。
3メガバンクや大手証券といった金融機関は、欧州で事業を継続するためにドイツなどでの現地法人の設立を進め、準備を整えた。関係者は「手は全て打った」と話す。
日本貿易振興機構(ジェトロ)が昨年12月に発表した調査では「英離脱が今後の事業に悪影響を与える」と回答した在英日系企業は前年比12.9ポイント増の59.8%に上っていた。ジェトロ海外調査部の担当者は「在庫の積み増しや欧州戦略見直しを進める企業が増え、ブレグジットを契機に不採算事業から撤退する動きも出てくるのではないか」と指摘している。
関連記事