【高論卓説】プレゼンで聞き手を引き付けるには 関心度・集中度を高める方法
■一文ごと、1人に話しかけるよう目配り
ビジネススキルをその場で向上させる演習プログラムを実施していると、「プレゼンテーション表現力を高めたい」という要望に接することが多い。「聞き手が関心を示してくれない」「聴衆がすぐに飽きてしまう」「自分の話が上滑りしている」という悩みだ。
しかし、このような状態に気付いていること自体、スキル向上の第一歩だ。「自分の話を聞かない聞き手が悪いのだ」と決めつけて、「しっかり聞いてください」「集中してください」「内職をしないでください」と言えば言うほど、抵抗感を与えてしまい、聞き手を引き付けにくくなる。
素晴らしいプレゼンテーションの担い手でも、時間の経過とともに、聞き手の関心度・集中度を低下させてしまうものだ。1杯目のコーヒーよりも2杯目のコーヒーの方が、おいしく感じないという限界効用逓減の法則は、プレゼンテーションにも当てはまる。聞き手の関心度・集中度が低下しても、決して慌てず、当たり前のことだと思って、関心度・集中度の度合いを高め、低下を未然に防ぐ仕掛けを繰り出していけばよい。
20年来、さまざまな演習を実施してきたが、聞き手の関心度・集中度を高めるのに簡単かつ効果のある方法がある。それは、「1人に対してワンセンテンス」と名付けたスキルだ。1人に対してワンセンテンス話したら、ゆっくりうなずくようにアイコンタクトを下に外して間をつくる。これだけのことで聞き手の関心度・集中度の低下をかなりの程度防ぐことができる。
日本のビジネスパーソンのアイコンタクトを外す向きは、上、斜め上、横、斜め下、下に、ほぼ均等に分かれる。それだけアイコンタクトを外す方向が意識されていない。しかし、上に外せば何か思い出しているようだと聞き手に思われ、斜め上だと時計を気にしているようだ、横だと反対しているようだ、斜め下だと自信がないと受け取られ、相手に抵抗感を与えてしまう。
うなずくように下に外すアイコンタクトは、一生懸命、真摯(しんし)に話しているというメッセージが伝わり、巻き込まれやすいと思うビジネスパーソンが多い。聞き手を引き付ける基本は、うなずくようにアイコンタクトを下に外すことだ。
プレゼンテーションは、立て板に水がごとくすらすらと話さなければいけないと思い込んでいる人が少なからずいる。しかし、流暢(りゅうちょう)な話は、度が過ぎると、聞き手に息つく暇を与えず、話の内容に思い巡らす余裕さえ奪ってしまう。アイコンタクトを下に外しているときに、ゆっくりとした間をつくることで、話の内容を理解してもらいやすくなる。
1人に対してワンセンテンス話して、アイコンタクトを下に外して間をつくったら、次の1人に対してもワンセンテンス話すことを繰り返していく。それにより会場にいるさまざまな聞き手を個別に引き付けていく。
ワンセンテンスの途中で間をつくることは変化を生み出すことにも役立つ。最後に間をつくることは、そのセンテンスで話した内容について理解を促す効果がある。一方、途中で、例えば、主語の後、述語の前で間をつくると、次の話は何だろうというように、期待を促す効果がある。1人に対してワンセンテンス話してうなずくというようなとても単純な動作に、実は、聞き手の関心度・集中度を高める大きなパワーがあるのだ。
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【プロフィル】山口博
やまぐち・ひろし モチベーションファクター代表取締役、慶大卒。サンパウロ大留学。第一生命保険、PwC、KPMGなどを経て、2017年モチベーションファクターを設立。横浜国立大学非常勤講師。著書に『チームを動かすファシリテーションのドリル』『ビジネススキル急上昇日めくりドリル』(扶桑社)、『99%の人が気づいていないビジネス力アップの基本100』(講談社)。長野県出身。
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