【スポーツbiz】プロ野球キャンプ、高卒ルーキーに注目

 
新人合同自主トレに参加する日本ハム・吉田輝星(左)=千葉県鎌ケ谷市

 1月も20日を過ぎるとプロ野球の話題が増えてくる。ファンには長いオフが明け、12球団が一斉にキャンプインする2月1日が待望の“お正月”だ。

 今年も6球団が沖縄県、5球団が宮崎県でスタート。日本ハムは4年連続、米国アリゾナ州スコッツデールで来るシーズンに備える。

カメラ5台で密着

 話題はやはり、甲子園を湧かせた新人選手たちである。ドラフト1位の野手トリオ、ロッテ・藤原恭大に中日・根尾昴(いずれも大阪桐蔭)、広島の小園海斗(報徳学園)は1軍帯同。宮崎の日南市で始動する広島の小園以外は、沖縄(ロッテは石垣島、中日は北谷町)でプロとして足跡をしるす。

 藤原には「CS日テレ」が密着、カメラ5台でキャンプでの全日程を中継するという。沖縄本島から中継車を船で運び、初めて石垣島から日本テレビがキャンプの模様を生中継する。ロッテと、連携する日本テレビの力の入れようが分かる。

 一方、日本ハムのドラフト1位投手、吉田輝星(金足農)は2軍スタート。アリゾナには同行せず、沖縄最北端の国頭村からプロ生活を始める。国頭村では押し寄せるであろうファンのために、公費でブルペン横に観客席を設置すると決めた。大リーグ、エンゼルスの大谷翔平の新人時代にもなかった“輝星シート”が出現である。

 話題の新人は球団ばかりか、キャンプ地にとっても大きな“財産”、有効に活用したいとの意欲がのぞく。

 今年も、ファンを動員する応援ツアーは少なくない。旅行代理店にとっても、いまやキャンプ地へのツアーは春の稼ぎどころとなって久しい。

 小欄でも毎年、キャンプの経済効果に言及しているが、プロ野球の春季キャンプはこうした話題に事欠かない。

沖縄に122億円効果

 琉球銀行のシンクタンク、りゅうぎん総合研究所は毎年7月に、その年春の「沖縄県内におけるプロ野球キャンプの経済効果」を発表している。2018年は、122億8800万円と過去最高を記録した。

 16年に初めて100億円を超え(100億400万円)、17年は109億5400万円。ホップ・ステップ・ジャンプと伸ばしている。延べ観客数も、前年より約2万8000人増えて約37万7000人。これまた過去最高の数字となった。

 りゅうぎん総研では、楽天が2次キャンプを久米島から観光客が訪問しやすい本島の金武町に移して実施、巨人が3軍キャンプを那覇で行ったことを理由にあげた。日本ハム1軍の名護不在を補ったわけだ。

 また、前年優勝の広島が2次キャンプ地の沖縄市でパレードし、カープ・ファンを集めた。ソフトバンクから移籍の元大リーガー、中日の松坂大輔や日本球界に復帰したヤクルトの青木宣親が観客動員に貢献したとも分析している。

 松坂、青木は選手個人の動向が観客動員を左右する好例。今年は甲子園で活躍した吉田や藤原、根尾への期待が大きい。

 沖縄と並んでキャンプが集中する宮崎県では毎年5月、スポーツランド推進室が「県外からのスポーツキャンプ・合宿受け入れ実績」を公表している。

 報告書によれば、18年1~3月の観客数は前年同期より5万9047人増えて76万2635人と過去最多を記録。経済効果も129億9700万円と、3億3600万円増加している。推進室によれば、ソフトバンクの優勝パレード、巨人対南海のOB戦、2軍が西都市でキャンプするヤクルトの1軍によるオープン戦実施が前年増に貢献したという。

 ただ、宮崎の場合はプロ野球の春季キャンプに絞った沖縄の調査と異なり、集計期間は長くプロ野球だけではない。同地でキャンプをはるサッカーのJリーグ、韓国プロ野球の動員数も含んで計上している。

 プロ野球キャンプに限れば、沖縄の優位が明確になった。沖縄は20年に現在改築工事中の名護市営球場が完成、日本ハム1軍がアリゾナから戻ってくる。高校生ルーキーが期待通りにファンを集めれば、さらに宮崎との差が開く。沖縄、宮崎ともに集客に知恵を絞るときだ。

 ちなみに、プロ野球各球団がキャンプにかける費用は約3億円。観光客が落とす金額の大きさが分かる。キャンプ地にも、待ち遠しい球春である。(産経新聞特別記者 佐野慎輔)