【eco最前線を聞く】住友商事、全社横断で水素の収益モデルを模索
2020年の東京五輪・パラリンピックで水素技術を世界に発信しようという機運が高まるなか、住友商事では昨年5月に「水素関連ビジネスワーキンググループ」を社内に設置、部門横断で取り組んでいる。まず、英国の大型水素製造装置メーカーと提携し、風力発電など再生可能エネルギー事業者向けに同装置を売り込む。再生エネ由来の電気で水素を作り、二酸化炭素(CO2)排出をほぼゼロにする「CO2フリー」を全面に、水素の価値をさらに高める考えだ。「水素関連のさまざまなサービスを開発して収益モデルを作りたい」と近藤真史・エネルギー本部戦略企画チーム長は意気込む。
再生エネと組み合わせ
--昨年7月に、英ITMパワーと戦略提携した
「ITMの水電解装置は、イオン交換膜を用いた固体高分子型水電解による水素製造技術。1000キロワット級の発電設備の水素変換に対応できる大型装置を得意とする。2000キロワットであれば、20フィートコンテナに収納できるコンパクトさがウリで可変性に優れる。再生エネによる電気を素早く純度の高い水素に変換できるのが特徴だ。日本市場向けの独占販売権を取得した」
--ITMの欧米での実績は
「欧州の燃料電池車(FCV)のバスステーション向けなど合計1万4000キロワット分の納入実績がある。19年末に英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルが持つドイツの製油所向けに世界最大級(1万キロワット規模)の同社製の水素製造装置を導入する計画だ」
「提携のシナジー効果で、今後は日本に加えアジア、オーストラリアの市場開拓も一緒に進めたい。国策で水素技術を進める中国も大きな市場で、住友商事は昨年、中国企業の安泰環境と水素技術の協力覚書も結んだ」
--CO2フリー水素とは
「水素は燃料電池として空気中の酸素と反応させる発電や自動車の走行時にはCO2を排出しない。一方で、水素製造過程に目を向けると、水の電気分解もあるが、多くが石油化学や石油、天然ガスを改質したもので、化石燃料由来が多く、製造過程でCO2が発生する。水分解に加え、太陽光や風力発電といった再生エネ由来と組み合わせることで、究極のエコエネルギーを目指す」
普及へ規制緩和が必要
--欧州は先行している
「ドイツでは、洋上風力による発電事業は北部が中心だが、需要地は南部だ。洋上風力の電気を南部に送電するにはコストがかかり、採算が合わない。そこで、風力発電の最盛期の余剰電力を水素に換えて、現地の都市ガスに混入して活用する動きが既に始まっている」
--商社の事業モデルとは
「水素の用途開発では、例えば離島の分散型電源向けやFCVバス、燃料電池を使った施設、温水プールなどへの活用が想定できる。水素プラットフォームを作り、CO2フリー水素の価値を高めて企業に仲介したり、再生エネの余剰電力と、需要をつなぐエネルギーマネジメントなど、さまざまなサービスを乗せて、収益につなげられるモデルを検討していきたい」
--水素普及に向けた課題は
「規制緩和が必要だ。欧米では、顧客が自ら水素を充填(じゅうてん)するセルフ型水素ステーションも登場しているが、日本は高圧ガス保安法などの規制が厳しく、水素ステーションの建設コストは、ガソリンスタンドに比べ約5倍といわれる。また、企業が再生エネを使ったと見なされる『グリーン電力証書』があるが、将来的にはその水素版ともいうべく、再エネ由来の電気から作った水素に『グリーン水素証書』が発行されることが望まれる。そうすれば、CO2フリー水素の価値が高まる」(上原すみ子)
◇
【プロフィル】近藤真史
こんどう・しんじ 京大経卒、1995年住友商事入社。機電経理部、イラン住友商事(テヘラン駐在)、エネルギープロジェクト部、インドネシア住友商事(ジャカルタ駐在)、石油資源開発部などを経て、2016年から現職。47歳。大阪府出身。
関連記事