【道標】岐路に立つローカル鉄道運営 政策で利用者増、広域連携模索

 

 ローカル鉄道の運営が岐路に立たされている。人口減やマイカー利用の増加で乗客が減少、黒字確保が困難なためだが、鉄道は環境への負荷が小さく都市再生にも有効で公益的価値は大きい。政策次第では利用者増が期待できるため、国や自治体による公費投入を含め、鉄道事業者、地元住民など幅広い連携により存続を模索する必要がある。

 JR北海道は、約半分の営業路線(1200キロ)について自社単独での維持が困難と公表、低収益路線はバス転換の方向で地元自治体と協議を進めている。広島県と島根県を結んでいたJR西日本の三江線は2018年3月、100キロを超える本州の路線としては初めて廃線となった。

 低収益の鉄道は全国に散在しており、沿線住民の利用のみを想定していては赤字の拡大は避けられない。民間事業者のJR各社にとって、今後増大が予想される既存鉄道インフラの維持管理費の捻出は困難となる。

 一方、地方には訪日外国人客に支えられている路線もある。札幌から旭川方面に向かう特急列車は、流氷やラベンダーなどの観光シーズンには乗客の8割から9割が外国人客となるほどだ。

 岡山県の宇野駅は宇高連絡船が廃止され、利用客数が漸減傾向にあった。しかし近年は文化芸術によるブランド化に成功した香川県・直島をはじめ、瀬戸内海の島々へ渡る外国人観光客により客数が増加した。宇野線は日中も時間帯によっては、2両のワンマン運行列車がさながら首都圏のラッシュアワーの様相を呈する。

 追い風は外国人観光客の増加だけでなく、公益的観点から鉄道を見直す動きだ。

 旅客のみならず貨物輸送の際に発生する二酸化炭素(CO2)量が少ない点に注目、欧州では地球温暖化対策の極めて重要な交通インフラとして鉄道貨物の整備など積極的な取り組みが見られる。わが国でも経済成長と温暖化対策を両立させるため、鉄道利用の再認識が求められる。

 さらに、街の中心部に都市機能を集めるコンパクトシティーや、自動運転などデジタル技術を活用してさまざまな交通サービスを需要に応じて利用できるようにするMaaS(モビリティー・アズ・ア・サービス)が今後、期待されている。地域の駅がそうした新たな政策の中核拠点になって人が集まり、鉄道が交通機関の柱として利用者を獲得する可能性がある。

 鉄道は国民の共有財産であり、一度廃止されてしまえばほとんど元に戻すことができない不可逆性の高いインフラだ。

 それ故、一民間企業の経営判断により存廃が左右される現状には、違和感がある。今後の活用方策、公的支援の在り方について国民的な合意形成のための議論をしていくことが必要である。

【プロフィル】藤波匠

 ふじなみ・たくみ 日本総合研究所上席主任研究員。1965年神奈川県生まれ。東京農工大大学院修了。2015年から現職。地方活性化などが専門。著書に「人口減が地方を強くする」など。