東大に100億円提供 ダイキンが仕掛けるサバイバル産学連携

 
協定締結を発表したダイキン工業の井上礼之会長(右から2人目)と東京大学の五神真総長(同3人目)=東京都文京区の東大

 空調大手のダイキン工業が昨年12月、東京大学と協定を締結した。ダイキンが今後10年で100億円を東大に拠出し、東大の学生や卒業生が設立したベンチャー企業を支援。100億円の拠出額は国内の産学連携では最大とみられ、ダイキンは空調ビジネスを超えた空気の新たな価値や新ビジネスの創出を狙う。(中山玲子)

 知の集積と野生集団の連携

 「当社はお世辞にも頭脳集団とはいえない。野性味ある実行力の集団だ。異質の当社が日本の知の集積である東大と連携することで面白い成果が生まれるのではないかとワクワクしている」

 昨年12月中旬の東京大学。東大の五神真(ごのかみ・まこと)総長と産学連携協定の記者発表の場に立ったダイキンの井上礼之(のりゆき)会長はこう強調した。ダイキンは10年間で毎年10億円を拠出、その半分を東大関連のベンチャー企業の支援に充てる。

 東大の学生や卒業生、研究者が設立した東大関連のベンチャー企業は約330社あり、この中から、ダイキンは空調ビジネスと親和性が高い企業と連携を深めたり、熱意ある起業家を必要なノウハウの提供や人脈活用、事業資金といった面でサポートしたりする。同社のテクノロジー・イノベーションセンターの河原克己・副センター長は「ベンチャーや起業家の卵と接点を持ち、スピーディーに可能性を探る」と話した。

 空調販売への危機感

 ダイキンがこうした大型の産学連携を決めた背景には、これまで世界市場で積極的に進めてきた空調機器の販売だけでは今後は生き残れないとの危機感がある。

 井上会長は、機器売りからソフトへのソリューションビジネスの転換の必要性を強調したうえで、「(当社は)イノベーションを起こす技術者が不足しており、ベンチャー企業の活用が最短の道になる」とした。斬新なアイデアや技術をもつ人材が豊富な東大ベンチャーの力を借り、企業として空調機器販売の次の段階へと進みたい考えだ。

 グローバル人材育成

 一方、東大が目指すのはグローバル人材の育成だ。東大のみならず、日本の多くの大学は学生の内向き志向の強まりを懸念している。今回の連携では、世界150カ国で展開するダイキンのグローバルネットワークで東大の学生を対象にしたインターンシップを実施。ビジネスの最前線を見てもらうことで成長を促す。五神総長は「(東大の)既存の資源では足りず、全世界に展開するダイキンは協業相手として望ましい」と述べた。

 このほか、既にあるダイキンと中国・清華大学との包括連携に東大が加わり、東大と中国・北京大学の連携プログラムにダイキンが参画。これまでに例のない規模の産学連携として今後の動きに注目が集まる。