【マネジメント新時代】EVシフト…部品メーカーの対応は 日本電動化研究所
□日本電動化研究所 代表取締役・和田憲一郎
年明けから経済に関する雲行きが一気に怪しくなってきたように思える。景気の先行指標といわれる工作機械や半導体製造装置は、最大手の中国を中心に急激に販売が落ち込み始めた。
自動車業界も何となく不安な年明けとなっている。また、日系自動車メーカーも遅ればせながら電気自動車(EV)シフトを進めている。このような環境下、体力のある大手自動車メーカーは良いが、部品メーカー、特にガソリン車専門の企業は難しい局面を迎えるのではないだろうか。今後、部品メーカーはどう対応すべきなのか、筆者の考えを述べてみたい。
中国市場縮小が象徴
2019年の自動車業界を予想する上で、いくつか避けて通れない事象がある。
(1)18年の中国自動車販売は28年ぶりに前年比2.8%減少となる2808万台となった(2)中国の新エネルギー車(NEV)販売は前年比61.7%増の125万台に躍進した(3)中国のNEV規制が19年から実施される。トヨタ、日産、ホンダの主要3社は、各約150万台年間販売しているため、19年NEV規制を満たすためには、走行距離200キロメートルのEVで約5万台の販売が必要となる。これはかなり難しい数値である(4)ジャガー・ランドローバーにて英国中心に4500人、日産が米国ミシシッピ工場で700人など、自動車メーカーでリストラの動きが見られる(5)トヨタ自動車とパナソニックの電池に関する合弁会社設立のように、EVシフトに対応する動きが出てきた-の5つだ。
このように、大きな潮流でいえば、ガソリン車の低迷と、新エネルギー車の躍進といえるであろう。そのため、体力のある大手自動車メーカーはガソリン車、新エネ車と分けて対応すれば良いが、これまでガソリン車の部品を専門に行ってきた部品メーカーは厳しくなる。あくまでも筆者の推測であるが、以下のことが予想される。
▽米欧中で、全体的にボリューム減により、生産台数が一気に減少する可能性がある▽これに伴い、自動車メーカーは部品メーカーの再編、選定見直しなどに着手する(2社購買から1社購買など)▽自動車メーカーの採算が悪化すれば、さらなるコスト低減が求められる▽これまでの系列を超えた取引が拡大する▽部品メーカーの多重構造ティア1、2、3、4などに関し、販売、流通見直しが検討される▽大幅コスト低減のため、海外サプライヤー(例:中国製、東南アジア製)の部品の輸入が拡大する▽技術力のある部品メーカーはM&A(企業の合併・買収)の対象となる-ことなどだ。
生き残り策は?
それではどうすれば良いであろうか。米中の貿易摩擦などまだ不確定の要素も多いが、現在の工作機械や半導体装置を例に出すまでもなく、突然ボリュームが下がることはあり得るであろう。筆者としては現段階で最悪のことも考え、以下のようなシミュレーションを想定しておくことも大切のように思える。
▽現在の生産ボリュームが3割以上減少した場合、どうするのか▽現在の商流から川上、川下など参入できる余地はあるか▽系列を超えて、他社にアプローチの可能性はあるか▽輸入される廉価な部品を想定した場合、自社でのコスト競争力はあるか▽現在の人手不足から、リストラが拡大すると人余りになる可能性がある。どのような対応方法があるのか▽新規分野の開発は既に着手しているか。いつモノになるかめどがついているか-などだ。
とくに、新エネルギー分野や、昨年から話題になっている「モビリティのサービス化(MaaS)」に関連する業務はどうか、海外事業は引き際を考えているか(一般的に、進出するより引き際が最も難しいといわれる)、本業以外のものに手を出していないか、その将来性はどうか-といった検討をしておくことが重要だ。
敬愛する経営学者のピーター・ドラッカーは「不況時にも機会は訪れる」と言う。どのような環境下でもチャンスはあるという意味であろう。
現段階であまりに悲観的になる必要もないが、マネジメント層はいつ何が起きても良いように、いろいろなことを想定し身構えておくことは大切であろう。好景気の時にはあまり心配なかったキャッシュ・フロー経営が改めて求められるのであろうか。
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【プロフィル】和田憲一郎
わだ・けんいちろう 新潟大工卒。1989年三菱自動車入社。主に内装設計を担当し、2005年に新世代電気自動車「i-MiEV(アイ・ミーブ)」プロジェクトマネージャーなどを歴任。13年3月退社。その後、15年6月に日本電動化研究所を設立し、現職。著書に『成功する新商品開発プロジェクトのすすめ方』(同文舘出版)がある。62歳。福井県出身。
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