AIで交通事故撲滅 京都府警が仕掛ける分析システム
日々起こる交通事故の防止に、コンピューターを用いた分析システムが成果を挙げている。京都府警では、交通事故の発生場所や時間帯、事故の形態などのデータを集約・分析して地図で示す「GIS(Geographic Information System=地理情報システム)交通事故分析」を本格運用し、人身事故件数の減少率が全国でも上位に入っているのだ。従来の事故データの集約・分析は、紙の地図にシールを貼りつけていたが、GISではより詳しい分析が可能に。将来的にはAI(人工知能)を用いて潜在的な事故を探り出すことも視野に入っている。(秋山紀浩)
多彩な条件すぐマップ化
「車と自転車など、事故の種類を選択して期間を指定すると、地図上に発生場所が表示されます。これをさらに処理すると、事故の多発エリアを密度で示すことができます」。
京都市上京区の京都府警本部。交通部の担当者が説明しながら、パソコンを操作すると、画面上の地図がくっきりと濃淡で色分けされた。「これと交通違反での検挙が多いエリアを照らし合わせてズレを見つけることで、今後強化すべき取り締まりエリアを把握することもできます」。
府警は平成26年、GISによる交通事故分析システムの試行を開始。28年7月から本格運用しており、本部と管内25署の約700台の端末で利用できる態勢となっている。
これまでに、府警は各署が地図で事故現場にシールを貼り付けるなどしていた。この手法だと時間帯別や曜日別、事故種別など、さらに細かい分析が難しく、多大な時間がかかっていた。
「GISの導入で、さまざまな条件下での事故を瞬時に分析できるようになった。限られた人的資源を効率的に活用でき、住民にも視覚的に分かりやすい、説得力のあるマップを示すことも可能になった」。府警交通企画課幹部は効果を指摘する。
多方面でGIS活躍
効果は着実に表れている。京都府内では平成30年、交通事故件数が大幅に減少。人身事故は12月20日現在で約5900件となり、前年同期から13.7%減った。死者数も同29.2%減の46人と統計史上最少となっている。府警によると、全国の都道府県警と比べても、減少率は高いという。
GISの活躍は交通事故や京都だけにとどまらない。もともと平成7年の阪神大震災で地図とデータを効果的にリンクさせた情報伝達ができなかった反省を機に改良が進んだ同システム。防災はもちろん、防犯など多方面で応用できる。
静岡県では、平成16年に作成された富士山の火砕流や溶岩流の到達範囲、広域避難計画などの情報をホームページで公表。一般住民や登山者などの「立場」や噴火開始直後などの「火山状況」、「噴火警戒レベル」などの条件を選択すると、条件ごとに避難地域や避難準備地域などが示される。
東京都では防犯ポータルサイト「大東京防犯ネットワーク」で、GISを用いて子供の安全に関する情報や犯罪発生件数、発生場所など地域の防犯に関わる情報を地図上に表示するサービスを提供している。子供に対する犯罪や交通事故発生件数など複数の情報を地図に表示でき、地域住民の見守り活動などに応用されているという。
分析・検証には課題も
京都府警では、交通事故分野で効果を発揮しているGISだが、今後の課題となるのは「何が」「どう関連して」事故や事故防止につながったのか、という効果の検証だという。
「例えば、ある交差点で出合い頭の事故が多いのであれば、一旦停止の取り締まりを強化すれば事故防止につながるという経験則はある。同じような相関性は他にもたくさんあるはず」と交通企画課の担当者。GISで集約した多様なデータを分析することで、事故と、事故を減らすための行動の相関性を見つけ出す必要がある。
その際には、天候や時間帯はもちろん、路面状況や平均速度、どんな目的で運転している人が多いかなど、多岐にわたる項目から事故に関連するものをピックアップしていくことになる。データによっては、こうした分析・検証作業はAIの方が得意であり、人が気付かなかった相関性を見つけ出せる可能性がある。潜在的に交通事故が起きやすいエリアの特定にもつながる可能性もあり、さらなる事故防止が期待できるという。
将来的には、自動運転の実現などで、さらに新たなデータが求められる時代が来る可能性もある。同課幹部は「現状のシステムにとらわれずに、時代の要請に合わせてシステムを変化させていきたい」と話した。
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