【スポーツi.】MLBが虎視眈々、狙うNFLマーケット
米ナショナル・フットボールリーグ(NFL)の頂点を決める「スーパーボウル」が3日、ジョージア州アトランタのメルセデスベンツ・スタジアムで開催された。試合を生放送したテレビ局CBSの番組内の30秒CMの平均価格は525万ドル(約5億7000万円)に達した。年々高騰する中、今年も多くの企業がテレビCMを準備して試合前からウェブ上で話題になった。試合中はCMタイムアウトによって中断されるたびに各社のCMがテレビで流された。(帝京大学准教授・川上祐司)
出場2チームのユニホームには、NFL公式スポンサーであるナイキや、会場提供のメルセデスベンツの企業ロゴが入り、ハーフタイムショーではペプシコがコカ・コーラの地元でパブリシティーを高める。サイドラインで指示するコーチはボーズのヘッドホンとマイクロソフトのタブレットパソコンを駆使してゲームプランを進行させる。極め付きはティファニー製の勝利トロフィーであろうか。
年々高まるスーパーボウルのバリューは多くの業種を巻き込みながらスポーツエコシステムを確立させて米経済を牽引(けんいん)していることは間違いない。だが、この一戦をさまざまな思いで見つめる街やファンたちがいることを忘れてはならない。
視聴率ワースト2
今年の対戦カード「ニューイングランド・ペイトリオッツVSロサンゼルス・ラムズ」の顔合わせは、くしくもメジャーリーグ(MLB)のワールドシリーズと同じく「ボストンVSロサンゼルス」の対決となった。結果は、史上最多の11回目の出場となったペイトリオッツが史上最少得点で制して最多タイとなる6回目の優勝を飾った。
敗れたラムズは17年ぶり4回目のスーパーボウル出場であったが、入場時には大ブーイングが沸き起こった。スーパーボウル出場を決めるニューオーリンズ・セインツ戦での誤審疑惑が尾を引いたからだ。常に高い視聴率を誇るスーパーボウルだが、今回は2009年に次いで最も低い44.9%にとどまり、中でもニューオーリンズでは26.1%だった。昨年は52.4%を記録したこの街ではスーパーボウル・ボイコットパレードが行われ、地元チームを愛する多くのファンが参加していた。
現在、ラムズの7代目オーナーは、ミズーリ州出身のスタン・クロエンケ氏。07年にイングランド・プレミアリーグのアーセナルの買収に成功して世界の富豪として名をはせる。10年に地元チームであったセントルイス・ラムズの完全買収に成功した後、16年にフランチャイズをロサンゼルスへ移転させた。当然のことながらセントルイス市民から猛反発を食らう。しかしその3年後にスーパーボウル出場を果たした。
地元人気は今一つ
そのラムズは、ロサンゼルスで約50億ドルを投じてホームスタジアム「ロサンゼルス・スタジアム・アット・ハリウッドボウル」を建設している。既に22年のスーパーボウルの開催が決まっている。しかし、ロサンゼルスでのスーパーボウルの視聴率は、今回がこれまで出場したチームの都市の中で過去2番目に低い44.6%だったように、フランチャイズとしてラムズの評価は決して高くはない。
戦力均衡を掲げるNFLではあるが、ここ最近のプレーオフ出場チームも限定されてきたように感じる。ラムズのようにオーナーによるチームの商業主義はリーグへの関心が低下することも懸念される。
スーパーボウル終了とともに、MLBチームはこぞって“Ready for Baseball”“Goodbye Football.It’s Baseball Season”とSNS(会員制交流サイト)にアップした。昨シーズン過去最高収益となる103億ドルを稼ぎ出したMLBは虎視眈々(たんたん)とNFLファンとその市場を狙っている。
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【プロフィル】川上祐司
かわかみ・ゆうじ 日体大卒。筑波大大学院修士課程スポーツシステム・健康マネジメント専攻修了。元アメリカンフットボール選手でオンワード時代に日本選手権(ライスボウル)優勝。富士通、筑波大大学院非常勤講師などを経て、2015年から帝京大経済学部でスポーツマネジメントに関する教鞭を執っている。著書に『メジャーリーグの現場に学ぶビジネス戦略-マーケティング、スポンサーシップ、ツーリズムへの展開』(晃洋書房)がある。53歳。大阪府出身。
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