人手不足、高齢者がリリーフ 大手で広がる採用増や待遇改善
経験豊富な高齢者の採用を増やしたり、待遇を改善したりする動きが大手企業に広がってきた。今週から本格化する春闘の労使交渉でも、深刻化する人手不足の穴を埋める即戦力として期待されるシルバー人材の活用が焦点になりそうだ。
トヨタ自動車は、60歳の定年退職後に再雇用した技能系従業員の待遇を一段と充実し、生産ラインで働く人の年収を現行から100万~150万円増やした雇用形態を2020年度に新設する方針だ。「熟練の技」をつなぎ留め、若手に技能を伝承してもらう。
外食大手すかいらーくホールディングスは今年1月から、パートやアルバイトの雇用年齢の上限を従来の70歳から75歳に引き上げた。長年、接客や調理に携わってきた優秀な高齢者を確保する狙い。「元気な高齢者が多く、長く働きたいという要望があった」という。
人材サービスのパソナグループは今年、主に他企業を定年退職した60歳以上を対象とする採用枠を新設した。年間80人程度を契約社員として雇用する予定で、今月6日に東京都内で開いた説明会には約200人が参加。同社の担当者は「かなり盛況で、その場で応募した人もいた」と手応えを感じている様子だ。
化粧品や健康食品を手掛けるファンケルは17年度から、1年ごとに契約を更新する65歳以上の再雇用制度「アクティブ(元気な)シニア社員」を導入。「本人のやる気が続く限り、何歳になっても働ける」としている。
賃上げの相場形成に影響力を持つ自動車大手の労働組合が13日に経営側に春闘の要求書を提出し、労使交渉が本格的にスタートする。経団連は加盟企業に対し、基本給を上げる場合はシニア層を含む優秀な社員への重点配分などを検討するよう要請。労組側も、人手不足解消には高齢者や女性、外国人ら多様な人材の活用が有効とみている。
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