【高論卓説】修復できるか日産の“傷” 融和姿勢示すルノーへの対応焦点
日産自動車が12日に発表した2018年4~12月期連結決算において、同社業績の悪化が顕著にみられる。前会長のカルロス・ゴーン被告が経営から失脚したことで、過去の強引な成長至上主義の膿(うみ)が出始めたといえる。
4~12月期の営業利益は前年同期から13.9%減少する厳しい内容であり、19年3月期通期の営業利益予想は4500億円(前期比21.7%減)へと900億円下方修正した。ゴーン・ショックの直接的な影響は、過年度財務情報修正額92億円にすぎない。
販売台数見通しは592万5000台から560万台へ、米国は155万台から145万5000台へ、中国は169万5000台から156万4000台へとそれぞれ見通しを大幅に引き下げるなど、販売面の失速が顕著である。北米と中国市場合計で、日産のグローバル販売台数の60%を占める。主力市場の販売失速が続けば、経営の屋台骨を揺るがす事態になりかねない。
幹部経営者の離職が始まり、経営執行陣にも綻(ほころ)びが見える。過去から上層部のごたごたが絶えない日産ではあるが、今回の混乱はスケールが違う。製品の開発現場にも不安がある。
ゴーン被告が主導した22年度までの中期経営改革では、日産と仏ルノーは4つのプラットフォーム(車台)を共同開発し新車開発を進める。日産の全販売台数に占めるアライアンス車両の比率は、現在は28%にすぎないが、22年度に56%、25年度には75%まで引き上げることを計画している。両社の社員の間で不協和音が深刻化すれば、車両開発にも大きな影響が出かねない。
ルノーは1月24日に開催した取締役会で、仏ミシュランの最高経営責任者(CEO)であったジャンドミニク・スナール氏を会長に任命し、副CEOのティエリー・ボロレ氏をCEOに昇格させた。スナール会長は、日産の取締役にも就任する。
2月13日には、アライアンスのガバナンスをつかさどるオランダのルノー日産BV統括会社のCEOには、ゴーン被告に代わりボロレ氏が就任した。ルノー側は着々とポスト・ゴーン体制を構築しており、日産とのアライアンスの立て直しを目指してくるだろう。
一方、日産のガバナンス(企業統治)体制の修復にはまだ時間を要する。3月末に予定されるガバナンス改善特別委員会の答申に沿って、日産が取るべき新経営体制を西川(さいかわ)広人社長とスナール会長を中心に議論を進めることになる。ガバナンス体制が定まらなければ、経営執行体制、管理職も含めた経営安定化のめどは立たない。
ルノーの新経営体制で主導権を持つのは間違いなくスナール会長だ。国際企業の名経営者との世評通り、バランス感覚を保った両社の経営のかじを取りそうだ。仏政府の過度な介入にくぎを刺し、フェアなガバナンス体制を示すのではないか。同氏にいかなる考えがあっても、牙を隠し融和姿勢を示すだろう。日産は自滅の可能性があるからだ。
最大の山場はゴーン被告の保釈のタイミングである。保釈後の主張は日産に混乱を来すリスクがある。ゴーン被告の嫌疑に関して、日産の企業責任を含め、ゴーン独裁の周辺に存在した経営陣や組織の疑義が晴れたわけではない。
保釈が認められないいらだちからだろうか。ゴーン被告の弁護人に、大鶴基成弁護士らが辞任し、ロス疑惑銃撃事件で有名な弘中惇一郎弁護士が就いた。どうやらこの戦いは、第2幕に入る気配が漂い始めた。
◇
【プロフィル】中西孝樹
なかにし・たかき ナカニシ自動車産業リサーチ代表兼アナリスト。米オレゴン大卒。山一証券、JPモルガン証券などを経て、2013年にナカニシ自動車産業リサーチを設立。著書に「CASE革命」など。
関連記事