数百円で「痛勤回避」が好評 大手私鉄、首都圏で有料着席サービス拡充

 
東京急行電鉄の「Qシート」車両(東京急行電鉄提供)

 首都圏の大手私鉄が、東京都心と郊外を結ぶ特急列車などで、通勤・帰宅向けの有料着席サービスの強化に乗り出している。500円程度の特急料金で過酷な満員電車の苦痛が避けられるため、時間帯によっては満席となる好評ぶり。高い乗車率がほとんどで収益を上乗せできるメリットもあり、各社とも拡充を図る。

 西武鉄道は14日、池袋駅(東京都豊島区)と西武秩父駅(埼玉県秩父市)間で3月16日から運行を開始する新型特急車両「Laview(ラビュー)」を報道陣に公開した。

 新型車両は先頭車両に丸みを帯びた曲面ガラスを採用。大きな窓から風景を楽しめ、ソファをイメージした座席でリビングのようにくつろげる空間となっている。

 池袋-所沢最速19分

 同社の後藤高志会長(西武ホールディングス社長)は「フラッグシップトレインとして、沿線の魅力を高めることにつなげたい」と話し、2020年東京五輪・パラリンピックに向けた観光需要の取り込みを目指すが、もう1つの狙いが通勤や帰宅の有料着席サービスの需要だ。

 ラビューは、池袋と西武秩父を運行する「特急ちちぶ」などに活用されるが、各座席に電源コンセント、車内Wi-Fiを用意するなどビジネス需要も意識した設計とした。高速化で池袋~所沢駅(埼玉県)間を最速19分で結ぶ利便性に加え、従来車両「ニューレッドアロー」より約4%多く乗客を収容できることから、後藤会長は「収益の拡大に貢献する」と期待を寄せる。

 一方、他の大手私鉄は有料着席サービス車両の増発などを進める。京王電鉄は今月22日のダイヤ改正で、朝の通勤時間の上り線に「京王ライナー」を新設する。京王ライナーの運行は昨年2月に夕方から夜間の新宿駅発下り線に導入されたが、平均8割超の乗車率と好調で、利用者からの要望もあり、上り線の運行を決めた。

 東武鉄道も3月のダイヤ改正で、池袋と小川町(埼玉県)を結ぶ「TJライナー」で、平日夕方の下り便を1本増やす。同時に座席は指定できない「着席整理券」方式を、「座席指定券」に変更し利便性を高める。

 “1両のみ”新方式も

 また、新たな取り組みとして業界で注目されているのが東京急行電鉄が昨年12月に始めたサービスだ。7両編成の急行で1両だけ座席指定車とする「Qシート」という方式で、ダイヤ変更などが少なくて済むという。混雑に悩む私鉄各社にとって有料座席サービスの現実的な対応になるとの評価も高く、同様のサービスが広がる可能性がある。(平尾孝)

 ■首都圏私鉄の主な有料着席サービス

 (事業会社/名称/区間/料金)

 西武/特急ちちぶ・むさし/池袋-西武秩父/300~700円

    拝島ライナー/西武新宿-拝島/300円

 小田急/ホームウェイ/新宿-箱根湯本、片瀬江ノ島/200~1090円

 京王/京王ライナー/新宿-京王八王子、橋本/400円

 東武/TJライナー/池袋-小川町/310~410円

    スカイツリーライナー/浅草-春日部/410~510円

 京急/モーニング・ウィング/泉岳寺-三浦海岸/300円

 京成/モーニングライナー/京成上野-成田空港/410円

 東急/Qシート/大井町-長津田/400円

 ※料金は特急料金や着席整理券料金