乗るログ

4WDの聖地に“凱旋” スバル・フォレスターで山形の雪路を行く

SankeiBiz編集部

 今回の【乗るログ】は山形県の雪道を舞台にスバルのSUV「フォレスター」を試乗してきた。国産4WDにとって雪上テストの“聖地”とも呼べる月山(がっさん)周辺の大自然の中で、マイルドハイブリッドシステム「e-BOXER」の感触を確かめながらスノードライブを楽しんできた。(文・写真 大竹信生/SankeiBiz編集部)

月山周辺の積雪路を走るスバル・フォレスター(SUBARU提供)
山形県大蔵村の肘折温泉周辺を走るe-BOXER搭載車(SUBARU提供)
インテリアが美しいとドライブも一層、気分が上がる
上品でダイナミック。高い質感も伴ったフォレスターのインテリア
ダイナミックさとスタイリッシュさを巧みに両立させたインテリア。使いやすさも抜群
レザーとソフトパッドを配したドアトリム。スイッチ類の質感は非常に高い
後部座席
クリアな後方視界を確保している
開放感たっぷりの大型サンルーフ
高い積載能力を誇るカーゴスペース。リヤシートを倒せば大人2人が寝ることも可能
e-BOXERを搭載した「Advance」グレード車(SUBARU提供)
山居倉庫とフォレスター
山居倉庫とフォレスター
山居倉庫とフォレスター
新型フォレスター
鶴岡市文化会館とフォレスター
撮影とスノードライブを楽しむ
撮影とスノードライブを楽しむ
フォレスターとともにスノードライブを楽しむ。ホイールがカッコいい
県道47号線の出羽三山神社大鳥居
高い雪の壁に囲まれた圧雪路を進むフォレスター
フォレスターの「X-BREAK」(手前)とe-BOXERを搭載する「Advance」(SUBARU提供)
山形県大蔵村の肘折温泉付近を走るフォレスター(SUBARU提供)
雪壁は3メートルを超えるところも…(SUBARU提供)
酒田港にたたずむフォレスター(SUBARU提供)
アクティブシーンを意識したX-BREAKのインテリア(SUBARU提供)
1972年に月山で行われたスバルの4WD冬季テストの様子(SUBARU提供)
羽田から搭乗した全日空機。庄内空港は見渡す限りの銀世界
最上川に沿って走る陸羽西線の単線路
山形名物の一つ「板そば」

 羽田空港から飛ぶこと約50分、目的地の山形県・庄内空港に到着した。辺りは一面の銀世界。今回参加したのはスバルが主催するドライブイベントだ。自動車メーカーによる雪上試乗会は通常、人工的に造り上げたクローズドコースを使ってスタッフが同乗するのが一般的だが、今回は雪の積もった公道を舞台に、所定のスタート/中継点(乗換ポイント)/ゴール地点以外は経路を問わない自由度の高いコース設定だった。豪雪地帯としても有名な山形県。雪山でスタックしたり、事故を起こすことも十分に考えられる。スタッフを伴わない単独試乗のため、広報車にはIP無線機が積んであったくらいだ。

 マイルドHVとガソリン車に試乗

 今回試乗した新型フォレスターはパワートレーンの異なる2モデルだ。スタート地点となる酒田市内のホテルから中継地点までを結ぶ第1区間は、水平対向4気筒2リッター直噴エンジンとモーターを組み合わせたe-BOXERを搭載した「Advance」グレードに試乗。中継地点と山形駅をつなぐ第2区間は、2.5リッターのガソリンモデル「X-BREAK」をドライブした。どちらのモデルもブリヂストンのスタッドレスタイヤ「ブリザックVRX2」を装着しており、雪上区間を含む計170キロのロングドライブに向けて準備は万全だ。

 まずはe-BOXER搭載車に乗り込み、昼食会場となる「ふるさと味来館」を目指す。ここが車両を乗り換える中継ポイントとなる。酒田市内から鶴岡ICを経由する第1区間の走行距離は約95キロだ。

 市街地から高速道へ

 この日の気温は朝8時のスタート時点で0度。市街地の一般道は除雪されてはいるが、所々、タイヤに踏み固められた雪が路面にこびり付いている。雪が溶け始めた箇所はシャーベット状の雪が入り混じっており、4つのタイヤがそれぞれ異なる状態のサーフェースに同時に乗っかっているような、とても不安定なコンディションだ。初めて乗るクルマなので、序盤は路面コンディションと車両の挙動を慎重に確認することに徹する。とくにシャーベット状の路面は足を取られやすく、滑りやすいので注意が必要。乾いた氷を濡らせばツルツルと滑りやすくなるように、水気の多い雪は非常に厄介だ。

 酒田ICから鶴岡ICまで50キロ規制が敷かれた高速道路を走行したが、うっすら白い路面が雪によるものか、それもパウダー状なのか金平糖をちりばめたような氷粒なのか、はたまた太陽の光がドライの路面に反射しているだけなのか、サングラスを掛けていてもコンディションの見極めがなかなか難しい。私が走行した区間は片側一車線の対面通行道路のため、バックミラーに自分より速いクルマが迫ってくると圧迫感があったが、路面状況の把握が難しかったこともあり、とにかく後続車を抑え込んででも速度重視の安全運転に徹した。肝心の走りだが、高速走行時(といっても50キロ規制下だが…)は車体が非常に安定しており、路面からの入力もスムーズ。前走車との車間を保ちながら法定速度域で走っている限り安心といった印象だ。車内もきちんと静粛性が保たれている。タイヤ性能もこれに大きく貢献しているのだろう。

 月山の雪道ワインディング

 一般道に降りて出羽三山の主峰である月山周辺に近づくと、山中に続くワインディングが待ち受けている。いったん足を踏み入れると、高さ2~3メートルの雪壁に囲まれた圧雪路がどこまでも続く印象だ。実は47年前の1972年に行われた国産初の乗用4WDの冬季試験は、ここ月山が舞台だったそうだ。テストを行ったメーカーは、スバルだ。某自動車ジャーナリストいわく、「全国のいろんな雪道を走ったが、一番タチの悪いのが山形の雪だった。湿気を多く含むからだ」ということだ。その言葉を自分への戒めとして、慎重にアクセルを踏みながら先へと進んだ。

 タイトなコーナーとアップダウンの激しい雪道では、とにかく車速に気を付けた。とくに下り坂は気づかぬうちに速度が上がりやすく、急なブレーキはスタッドレスといえども制御が困難。ブレーキング時はグリップ力(路面をひっかく力)を失いやすいため、一度スキッドすれば雪壁に一直線だ。逆に、スピードの出し過ぎに注意し、カーブに入る前は十分に減速して、ハンドル操作と合わせて「アクセルを上手にコントロールしてトラクションを得ながらクルマの挙動を制御する」ことが肝心となる。限界を超えた走行はいかなる場面でも危険だが、AWD(常時四輪駆動)やスタッドレスタイヤといった雪道走行に必要な装備を揃えて、正しい知識を身につけ、基本に忠実な運転を心がけさえすれば誰でも安全に走ることができる。

 モーターとAWDは雪上でベストマッチ

 走り出しから低速域にかけてモーター走行するe-BOXERは、雪道で大きなメリットがあることも発見できた。とくに発進時はガソリン車と比較してトルクの立ち上がりが早いため、上り坂でもわずかなアクセル操作に対してクルマが素早く反応し、グイグイと気持ちよく走ることができる。低速走行が中心となる雪上走行時こそ、AWD性能を存分に生かすことができるのだ。また、AWDは前輪・後輪のグリップ量がアンバランスになることでスリップしやすくなることがある。とくに今回のように圧雪路、凍結路、積雪路、シャーベット、ウエット、ドライと様々なパターンが混在するケースはスタビリティーを失いやすいが、スバルのAWDは前輪のスリップ量を把握して制動トルクを後輪に配分することで、高い安定性と旋回性を実現している。

 実際、真っ白の屈曲路を走っていても全く不安はなかった。ハンドリングは非常に行儀よく、目立つようなスリップやアンダーステアもなかった。スピードにさえ気を付ければ轍も怖くない。状況に応じて時速20~50キロ以内で走行する限り、思いのままにクルマを操ることができるのだ。

 公道試乗の意義

 今回は公道を走ったが、刻々と変わる環境や路面コンディションの中を、日常生活を送る地元のドライバーたちと一緒に走る楽しさと難しさを体験することができた。これにはスバルの「クローズドコースでは味わえない日常を体験して、『安心と愉しさ』と『総合雪国性能』をぜひ体感してほしい」との思いが込められている。AWD開発の経験から常に「実路でどうあるべきか」を考えているそうだ。

 雪道は不慣れだと怖いかもしれない。私も試乗会を除けば雪上走行する機会はほぼないが、雪道と車両とドライバーによる“3者の会話”を通して信頼や安心、技術や自信といった感覚を体得することができれば、自然とスノードライブが楽しくなってくるし、もっと走りたいと思うことだろう。私事で恐縮だが、子供のころは夏になると、過去にレオーネ2台(初代と3代目、ハイトコントロール付)、レガシィツーリングワゴン(アウトバック)などを所有し、現在もインプレッサに乗る“スバリスト”の父親に連れられて毎年のように八ヶ岳にキャンプと釣りに行ったことを思い出す。四駆やハイトコントロールがもたらす安心感、他のキャンパーが辿り着けないような山奥まで突き進める“優越感”が、子供ながらに嬉しかった。今でも夏になれば懐古するいい思い出だ。昔飼っていた柴犬や、現在の相棒である甲斐犬が実家のスバルと他のクルマのエンジン音を聞き分けられるのも、子供ながらに不思議だった。家族がスバルで家に近づくと、犬は「ワンワン」と大騒ぎ。これも独特のエンジン音を奏でる水平対向エンジンを持つ、スバル車の魅力の一つだ。

 路面コンディションを問わない走行性能

 ふるさと味来館で郷土料理の「板そば」に舌鼓を打った後は、ガソリン車の「X-BREAK」に乗り換えて山形駅へ。第2区間は序盤の雪道を除きほぼドライのコンディションだったが、SUV特有の見晴らしの良さはもちろん、最低地上高220ミリという車高の高さを感じさせない安定した走り、マナーのいい足回りなどオンロードを含めてコンディションを問わない総合性能の高さを見せつけられた。また、優れた後方視界やサンルーフがもたらす解放感も気持ちのいいドライビングにつながることを再認識。常にスバルと同社が発行する月刊誌「カートピア」のある環境で育った私としては、最近のスバル車はどれもインテリアの質感が非常に高くなったことも感動ポイントだ。あとは塗装のクオリティーにもっと磨きがかかれば…完璧じゃないか。4人家族を持つ身としては、「安心してどこにでも行けるフォレスター」はお世辞抜きに購入候補に割って入る一台だ。雪上ドライブの興奮がさめやらぬ中、お土産の「ふうき豆」を携えて東京行きの新幹線に乗り込んだ。

 そういえば、山形県といえば芋煮が有名だが、地元の人いわく「冬はんまぐね。秋にけ」とのことで今回食べることはできなかった。また秋に来るか-。

《ヒトコト言わせて!》

 スバル広報部・山下真輝さん「フォレスターは、スバルが最量販車種と位置づけるグローバル戦略車です。取り回しのよさと室内の広さを両立したパッケージングと、SUVらしいたくましいデザインを採用し、お客様の『冒険心』を掻き立てるクルマです。機能面では、アイサイトをはじめとする先進安全機能を持ち、スバルグローバルプラットフォームの採用により、クラストップレベルの安全性能、優れたハンドリング性能、快適な乗り心地を実現しています」

 【乗るログ】(※旧「試乗インプレ」)は、編集部のクルマ好き記者たちが国内外の注目車種を試乗する連載コラムです。更新は原則隔週土曜日。▼アーカイブはこちらから

主なスペック(試乗車「Advance」グレード)

全長×全幅×全高:4625×1815×1715ミリ

ホイールベース:2670ミリ

車両重量:1640キロ

エンジン:2.0LDOHC直噴+モーター(e-BOXER)

総排気量:2.0リットル

最高出力:107kW(145ps)/6000rpm

最大トルク:188Nm(19.2kgm)/4000rpm

トランスミッション:CVT

駆動方式:AWD

タイヤサイズ:225/55R18

定員:5名

燃料タンク容量:48リットル

燃料消費率(JC08モード):18.6キロ/リットル

車両本体価格:約310万円