【eco最前線を聞く】「戻りコン」を原材料として再利用
鹿島は環境配慮型コンクリート「エコクリート アールスリー」を、神奈川県藤沢市で施工した複合施設建設工事に本格適用した。同コンクリートは、有効な手段がなく廃棄処分していた「戻りコンクリート(戻りコン)」を原材料として再利用したもので、資源循環を図りながら二酸化炭素(CO2)排出量を抑制するという特性を備えている。開発に携わった技術研究所建築生産グループの百瀬晴基主任研究員は「このコンクリートは地産地消型。まずは神奈川県でのインフラづくりに力を入れ、地域拡大につなげていきたい」と意欲を示す。
CO2排出量を抑制
--鹿島は環境配慮型コンクリートの開発に力を入れている
「建設業ではセメント関連のCO2排出量の割合が多く、日本全体の約4%を占める。持続可能な開発目標(SDGs)への企業貢献が求められる中、低炭素コンクリートによっていかにCO2を減らせるかが鍵を握るからだ。これまでに低発熱の高炉セメントなどを活用したコンクリートを開発、一部の物件で活用してきたが用途が限定されている。これに対しアールスリーは適用部位の制限がない点が特徴だ」
--アールスリーの特性は
「戻りコンから骨材を取り除いた後に脱水、粉砕して製造するスラッジ再生セメント『セムアールスリー』を、セメント全体の20%の割合で使用している。薬剤などを使用することによって強度は一般的なコンクリートと同等で、施工後もひび割れがない良好な状態を維持し高い品質を確保している。
2012年度から環境省による研究助成を受け、当社と生コンの製造業者である三和石産(藤沢市)、東海大と共同で開発。2017年にはJIS(日本工業規格)マーク表示品として出荷が可能になり、地球温暖化防止活動環境大臣表彰を受賞している」
--今回の工事概要は
「藤沢市公民館・労働会館等複合施設建設工事に適用した。地上5階・地下1階の建物で総数量約1万立方メートルのうち約6000立方メートル分をアールスリーとした。圧縮強度も問題なく外観状況も普通コンクリートと変わらず良好な美観を確保している」
生コン車300車分縮減
--どういった効果が生じたのか
「まず低炭素化を果たした点だ。CO2削減量は約480トンで、これは東京ドーム約12個分の人工杉林(約4万6000本分)が1年間に吸収するCO2量と同じ。建物全体のCO2排出量を約10%削減したことになる。廃棄量も縮減した。具体的には藤沢市の工事で発生する生コン車300車分に相当する戻りコン廃棄量を縮減した」
--今後の供給計画は
「藤沢市と横浜市内の2カ所で供給できる態勢を構築しており、エネルギー施設や物流倉庫、事務所などでの適用を検討している。コストとの兼ね合いを考慮し、東京など需要が大きいエリアにリサイクルプラントを設置することも課題だ」(伊藤俊祐)
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【用語解説】戻りコンクリート(戻りコン)
受け入れ検査に使用したものなど、やむを得ない理由から使用されず工場に戻される生コンクリートを指す。年間発生量は生コン出荷量の約1.6%に当たる約200万立方メートルで、中規模ビルの約500棟分に相当する。砕いて路盤材に使用することもできるが、日本は道路の整備が進んでいるため、それだけの量を受け入れることはできない。このため骨材分を除き縮減した上で約半分の100万立方メートル程度が産業廃棄物として処理される。
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【プロフィル】百瀬晴基
ももせ・はるき 東北大院博士課程修了。2000年鹿島建設入社。技術研究所でコンクリートの研究開発に従事。41歳。大阪府出身。
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