指定金業務、メガバンクに動き 三菱UFJが約10市で指定金融機関を辞退

 
三菱UFJフィナンシャル・グループ本社。グループ会社の三菱UFJ銀行が指定金融機関をめぐり、関西を中心に約10市で指定を辞退した
指定金融機関の主な仕組み

 地方自治体の公金収納や支払い事務などを受託する指定金融機関をめぐり、三菱UFJ銀行が兵庫県芦屋市など関西を中心に約10市で指定を辞退したことが25日、分かった。長引く低金利で経営環境が悪化し採算割れを強いられている指定金業務の見直しを行った結果、手数料の増額を断った自治体との契約を解除。業界最大手の動きを踏まえ、指定を辞退する動きが他行にも広がる可能性がある。

 低金利で利ざや縮小

 指定金は自治体の“財布”を預かることで多額の公金を預金として運用できるのに加え、地方債の引き受けなど自治体との幅広い取引を通じた手数料収入で経費を相殺できると考えられた。自治体のお墨付きを得て地域住民の信頼感が増す利点もあり、かつては各行が獲得にしのぎを削った。

 ただ、低金利で本業の貸出業務は利ざや(貸出金利と預金金利の差)が縮小。銀行は預金が増えても十分利益を稼げる運用先が見つからずビジネスモデルの見直しを迫られた。地方債など資金運用も自治体が入札を導入しうまみは減った。

 にもかかわらず、税金の収納作業では自治体ごとに異なる書式を手作業で仕分けするなど手間がかかる。自治体が銀行に支払う手数料は、コンビニエンスストアでの税金収納などに比べて著しく安いとも指摘される。

 各行は経営環境の悪化で人員・業務量の削減に加え、店舗網の見直しにも着手した。三菱UFJ以外のメガバンクは自治体との関係性を維持するため足元では指定辞退まで至っていないが、「利ざや縮小が止まらず、今後は(辞退が)絶対にないとはいえない」(メガ銀幹部)との声もある。

 こうした中、芦屋市は従来、三菱UFJと三井住友銀行を1年交代で指定金融機関にしていたが、三菱UFJの辞退で今後は三井住友のみに絞る。市役所内に2台ある三菱UFJのATM(現金自動預払機)は3月にも撤去される見通し。

 三菱UFJは2018年3月、芦屋市に対し現金の取り扱いや行員派遣費用などで年間1500万円(これまで約7万円)と口座振替手数料で1件当たり10円を請求。市側から却下されたため指定辞退を通知した。

 芦屋市担当者は「近隣自治体や他の金融機関との兼ね合いもあり、三菱UFJだけを優遇することはできない」と理由を説明する。

 三菱UFJは指定を受けた他の自治体とも手数料見直し交渉を進めており、芦屋市など約10市を除いて増額が認められたもようだ。

 手数料見直し進む

 一方、地域密着型経営を行う地方銀行は、大手銀行に比べ指定金業務を見直すハードルは高い。ただ、18年4~12月期決算で8割超が最終減益または赤字になるなど経営悪化が進み、一部で辞退を視野に強気の交渉に入る動きもあるという。

 自治体も指定金がなくなれば税金の収納事務を職員が背負わざるを得ず、住民サービスに影響が出かねない。「ほとんどただ働き」(地銀関係者)と揶揄(やゆ)される指定金業務だが、手数料の見直し交渉が進めば自治体と金融機関の力関係に変化が生じる可能性がある。

【用語解説】指定金融機関

 地方自治体が公金の収納や、市民・企業への支払い事務を行うため指定する金融機関。地方自治法で都道府県は設置が義務付けられ、市町村は任意。事務手数料は、ほぼ無料のケースが多く、金融機関側の負担で行員を市役所などに派遣している。