クラフトバンドに魅せられ、人生が一変 

 
松田裕美・エムズファクトリー社長

 □松田裕美・エムズファクトリー社長

 「この魔法の紙ひもが人生を一変させた」。再生紙が原料の幅1.5センチの紙ひも「クラフトバンド」を示しながら屈託なく笑う。子育て中の専業主婦だった約15年前、手軽にバッグやカゴが作れる手芸材料「クラフトバンド」に魅せられ、何もわからないなかで始めたネットショップが、今では登録ユーザー8万人強、年商7億円を誇る国内最大級のネットショップに成長を遂げた。

 すべての始まりは、子供の学校の保護者会で参加した手芸教室でクラフトバンドを使ってバッグを作ったことだった。クラフトバンドはもともと米帯(べいたい)と呼ばれ、米袋の口を結ぶひもとして利用されていたが「出来上がったクオリティと、500円程度で済む材料費の安さに感動」し、夢中になった。その後、引っ越した千葉県一宮市で近所の「ママ友」たちに作り方を教えているうちに評判を呼び、公民館などで指導する講師の依頼が舞い込むようになり、「やるなら徹底的にやろう」と決意した。見たことのない編み方の籠を買ってほどいてみたり、編み物専門書の写真を調べたりして研究を積み重ね、それまで十数種類しか知られていなかった編み方を約100種類に増やし、たった一人でクラフトバンドの販売会社を設立した。

 事業を立ち上げて感じるのは、バッグやカゴづくりが人々の生きがいにつながっていること。例えば、介護施設の高齢者に利用してもらうと単なる趣味というだけでなく、「人にプレゼントすると、感謝してもらえる品を自分の手で作り出せる」「バッグづくりを通して、忘れていた達成感を思い出した」といった声をたくさんもらうという。東日本大震災後には就業支援の一環として、被災地にバッグやカゴづくりをする機会を提供し、作った品を企業に有償で販売する仕組みも考案した。「経営しながら利益だけじゃないことを顧客から学んだ。みんなに喜んでもらえて、私自身も生きている実感をもらっている」と話す。

 クラフトバンドによるバッグ、カゴづくりが人気を呼んでいることを見て、クラフトバンド販売に追随する企業も出てきているが、「当社のダントツ1位は簡単には揺るがない」と断言する。その最大の理由は、会社と同時に設立した、講師の資格を認定し養成する「クラフトバンドエコロジー協会」の存在だ。これまでに通信教育で約3200人が講師になり、全国に愛好家を広げている。この講師たちが受講者にエムズファクトリーのネットショップを紹介している。「この3200人の営業マンがいることが最大の強み」と強調する。

 今の悩みはクラフトバンドの旺盛な需要に供給が追いつかないこと。国内企業に生産委託しているが、「今後は品質が確認できれば海外企業からも仕入れていきたい」と次の一手を考えている。

【プロフィル】松田裕美

 まつだ・ひろみ クラフトバンド手芸を広める過程で材料のネットショップを設立。同時に作ったクラフトバンドエコロジー協会の代表理事に。編み方を紹介した著書も多数。好きな言葉は「結」。「ひもを結ぶと、お客様との縁を結ぶ」の意味を込めているという。長崎県出身。51歳。

 <企業プロフィル>2003年に個人事業主としてクラフトバンド販売を始め、06年に法人化。現在は300色以上の品をそろえ、そのうちオリジナルカラーは過半を超える。

 ▽本  社=千葉県茂原市八千代3-11-16 M’sビル

 ▽事業内容=クラフトバンドのネット販売など

 ▽従業員数=30人